英国特有のボリュームのある温かい朝食
昔、ウエストエンドで新作の演劇やミュージカルを観るため、ロンドンに通い詰めたことがありました。そんなときにお世話になったのが、比較的安価に泊まれるベッド&ブレックファスト(B&B)。パディントン駅付近などロンドン市内にB&B街がいくつかあって、ここはオーストラリアの旅行者が多いなど、それぞれに特徴があった記憶があります。
B&Bはその名の通り、ベッドと朝食を用意してくれる宿泊施設。安い宿の中には、「コンチネンタル・ブレックファスト」と呼ばれるパンとコーヒーといった簡素な朝食を出すところもありましたが、通常は「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」と呼ばれる、ボリュームのある温かい朝食を出してくれました。安い学生寮に泊まった時ですら、朝食の品数が多くて驚いたものです。これはもう伝統なのですね!
さて、フル・イングリッシュ・ブレックファストには決まったメニューがありませんが、代表的な材料は、ベーコンとソーセージ、卵(目玉焼きや炒り卵など宿によっては調理法を聞かれる)、ベイクドビーンズ、トマト、マッシュルーム、トースト、揚げパン、コーヒーや紅茶などの飲み物です。ハッシュド・ポテトが付くこともありますが、これは比較的近年に付けたされたメニューだそうです。
かつて作家のウィリアム・サマセット・モームは、「もし英国でまともな食事にありつきたかったら、朝食を3回食べることだ(If you want to eat well in England, eat three breakfasts.)」と皮肉交じりに言いました。で、英国では多くのカフェやパブで終日朝食(all-day breakfast)を提供しており、実際に朝食を朝昼晩と続けて食べることができるのです(笑)。
なお、隣国アイルランドにもフル・ブレックファストの伝統があり、メニューは英国と似ていますが、アイルランド特有のソーダブレッド、ポテトケーキなどが付くことがあります。
↑アイルランドのフル・ブレックファストの切手(2022年)。ベイクドビーンズはなく、ソーダブレッド、ポテトケーキが付くことがあるのが英国との違い。

フル・イングリッシュ・ブレックファスト Full English Breakfast レシピ
【材料】
1人分
ベーコン(スライス) 2枚
マッシュルーム 2個(小さなものは4個。食べやすい大きさにカット)
トマト 小1個(半分にカット)
たまご 1~2個
ベイクドビーンズ(缶詰) お好みの量
食パン 1枚(トースターで焼いておく)バター 大さじ1
塩 少々
こしょう 少々
ウスターソース(お好みで)
【作り方】
1.フライパンまたはスキレット(小さめのフライパン)にバターを溶かし、中~弱火でマッシュルームを焼く。焼けたらフライパンの端に寄せる。
2.同じフライパンでトマトの切り口を下にして焼き、同様にソーセージ、ベーコン、ベイクドビーンズを焼いていく。
3.最後にたまごを割り入れ、目玉焼きを作る。塩、こしょう、お好みでウスターソースをかける。フライパンのまま食卓に並べ、トーストした食パン、紅茶などの飲み物と一緒に。
※ほかに、千切りしたじゃがいもに塩、こしょうをしてまとめて焼くまたは揚げた「ハッシュド・ポテト」、血のソーセージ「ブラック・プディング」、玉ねぎなどを加えることがあります。
【作り方】
フル・イングリッシュ・ブレックファストの作り方手順(現地動画)
バッキンガム宮殿でロイヤルファミリーのためにフル・イングリッシュ・ブレックファストを用意した、シェフのダレン・マクグレイディさんによるレクチャーです。