e-food.jp「世界の料理レシピ集」では、世界の多様性を顧みて、国連(193カ国)、国際オリンピック委員会(IOC 206ヵ国)、国際サッカー連盟(FIFA 208ヵ国)それぞれの加盟国や、ISO 3166=国際標準化機構による国名およびそれに準ずる区域(249ヵ国・ただし無人島・非定住者のみの地域は除く)とともに、独特の文化・高度な自治権を持つ各国の州・地方等の郷土料理を網羅しています。
郷土料理は奥深く、地理の横糸と歴史の縦糸で紡ぎ、民族性や宗教、風土等を織りなしたタペストリーのようなものだと考えています。食文化と政治的な区分は必ずしも一致するものではありません。
一方で、旧ソ連で各地の民族料理を組み合わせ、材料を安くして意図的に作られた「ソビエト料理」のように、政治が食文化に与えてきた影響も否めません。
人類の長い歴史の中で、人間の引いた国境は、吸収、分裂、消滅を繰り返して変貌を遂げてきました。実際に、現在も英国のスコットランドのように新たに独立機運のある地域も世界中に存在します(stateという行政区分を表わす英単語には「州」だけでなく「国家」の意味もあります)。いわゆる”国民食”は、ローマ帝国が分裂してヨーロッパに主権国家が現れた頃に存在証明として作られたのが始まりだといわれていますが、かようにして食文化は自他問わず常に変化してきたのです。
また、食文化を学ぶ上では、たとえばISO 3166に割り当てられた人口1,500人弱である南太平洋のトケラウ諸島と、割り当てのない人口約750万人かつ特異な風土を持つスペインのカタルーニャ州のどちらにより重みがあるかを見極めるバランス感覚も大切です。
このような見解から、当サイトおよび著書『世界の郷土料理事典』では、いったんの区切り数として「300ヵ国・地域の郷土料理」という表現を用いました。
もちろん、特色ある食文化を持つ地域数はもっとたくさんあります。マイクロリージョン(microregion)の最小形である「村」単位のコミュニティまで落とし込めば、無数といってもいいでしょう。そのため、サイトで取り上げる地域数も今後、増える可能性があります。
他には補足として、国・地域の枠にはまらない【宗教料理】と【古典料理(現在は消滅した料理を含む)】を、重要事項として取り上げています。