ドイツ連邦共和国 Federal Republic of Germany | ヨーロッパ
ソーセージとビールだけではない、地方色豊かな食文化を持つ国
ドイツ料理といえば、ソーセージ(ドイツ語ではヴルスト)と、付け合せに欠かせない酢漬けキャベツのザワークラウトに、じゃがいも。そして飲み物はビール。そんな先入観が強いですが、実際は、各地にいろいろな郷土料理があります。
寒冷地でもよく育つじゃがいもは、18世紀にフリードリッヒ大王が奨励して広まったといいますが、ドイツをおおまかに東西南北に分けてみても、その料理の種類はけっこう幅広いことがわかります。



まず、北海とバルト海に面した北部の港町ハンブルクでは、ニシンなどの魚料理が特徴的。牛肉とニシンのすり身、じゃがいも、たまねぎの炒めて煮たラプスカウスという名物料理があり、これは船乗りが船上で作ったのがはじまりとされています。
また、ハンブルクといえば、ハンバーグ。ハンバーグは、もともとドイツの料理ではなく、モンゴル~トルコ系の騎馬民族で、13世紀にヨーロッパ侵略をはかったタタール(韃靼=だったん)人が持ち込んだ生の馬肉のミンチ料理から派生した、タタール=タルタルステーキがもとになった料理だといわれています。ハンブルク港からイギリス、アメリカに渡って「ハンブルクから来た料理だから」ハンバーグと呼ばれるようになった、また”ハム”から連想されたとかいわれ、世界中で定着しました(ちなみにご当地ハンブルクをはじめとするドイツでは、ハンバーグとはいわず、フリカデレ(上写真)といいます。
フランクフルトのある西のライン川流域は、ビールやワインの産地があり、フランクフルトは、その名もフランクフルト・ソーセージの発祥地。正式名を”フランクフルター・ヴェルストヘン”といい、茹でたてにマスタードをつけて食べます。ほかに、豚の胃袋にじゃがいもやたまねぎ、ひき肉などを詰めてゆでたザウマーゲンという名物料理も。
ゲーテ街道の中心地である、東部のチューリンゲン地方では、香ばしい焼きソーセージのテューリンガー・ヴルストがよく知られています。
アルプス山脈のもと、美しい森と湖に恵まれた南部のバイエルン地方は、ビールとソーセージの宝庫。バイエルンの州都で、世界的なビールの名産地ミュンヘンには、”オクトーバーフェスト”という、有名なビール祭がありますが、バイエルン出身の友人によると、バイエルン人には、きちっとして真面目なドイツ人の印象とちょっと違った、お祭り好きで、のんびりした南国的気質があるといいます(そして、バイエルン語という、標準のドイツ語とちょっと違う言葉を話します。現ローマ法王のベネディクト16世もバイエルンの出身でした)。
そして、ドイツ人は確かにソーセージが大好き。種類も実に豊富(1500種近くあるとか)。バイエルンでは、ヴァイスヴルストという仔牛の肉だけで作られた白いソーセージや、ニュールンベルガー・ヴュルストヘンという、スパイスの効いた小ぶりのソーセージが名物です。
特に、生粋のミュンヘンっ子は、ヴァイスヴルストに特別の思い入れがあるようで、注文は1本ずつ、必ず甘いマスタードをつけて食べ、付け合せはブレーツェ(プリッツェル)、飲み物はビールでなくてはいけないという決まりがあります。南ドイツでは、肉料理のほかに、シュペッツェレ Spaetzle (レシピ)という、ニョッキのような小麦粉のおだんごをゆでて、チーズなどをかけて食べる素朴や料理も人気です。
他にも、豚すね肉を塩ゆでしたベルリン名物のアイスバインや、仔牛カツレツのシュニッツェル、小麦粉のパスタ風料理が特徴的な南西部のシュヴァーベン地方のマウルタッシェなど、ドイツの郷土料理は数知れず。ライ麦や黒麦を使ったパン(これも種類が多い)や、樹木の年輪をかたどったバウムクーヘンに代表される素朴なお菓子。さらにはドイツ全土で何と6000種以上もあるという地ビール、そしてモーゼルやラインガウ、陶磁器でも有名なマイセンなどで作られる芳醇なワインも、その豊かな地方色に彩りを添えています。
ドイツ料理の写真
ソーセージ(日本人の目にはハムに見える)。薄く切ってあっても、もともとは腸詰めだからだそう。
ドイツ料理のレシピ


