アルメニア共和国 Republic of Armenia|ヨーロッパ
豊かな食材を使った、手間ひまかけた料理
紀元前1世紀頃に国家を築き、紀元301年に世界で初めてキリスト教(アルメニア正教)を国教とした古い歴史を持つアルメニア。
コーカサス(カフカス)にあるこの国は、ペルシャやモンゴル、オスマントルコ、ロシアなどから長く過酷な支配を受けながら、1991年にソ連崩壊を経て独立を遂げました。



アルメニア人の作曲家アラム・ハチャトリアンが書いた、バレエ組曲「ガイーヌ」の歌曲”剣の舞”をご存知でしょうか。 躍動するその力強いメロディーとエキゾチックな旋律には、まるでアルメニア民族の伝統への誇りが秘められているようです。さて、そんなアルメニアの料理は、古代ローマやペルシャ、ビザンチン、アラブ人など歴代の支配国の文化に取り入れられてきました。
たとえば、肉や野菜を串焼きしたホロバツ(シャシリク=シシカバブ)。これをラワシという薄皮のパンで包んで食べます。また、ぶどうなどの葉にご飯を包んだトルマ(ドルマ)は、今ではトルコ料理として有名ですが、起源はアルメニアであるともいわれています。
日本人にとっての富士山のように、アルメニア人にとって聖なるアララト山(「旧約聖書」のノアの方舟の流れ着いた山とされる。現在はトルコ領)から名付けた、チキン・アララトという、挽き割り小麦を添えた肉料理もあります。
アルメニアは肥沃な盆地を擁し、古くから農業が盛んだったこともあって、食材をピューレにしたり、包んだりと、調理法もバラエティで凝っています。小麦、大麦、米などの豊富な穀物類のほか、肉や魚を調理する際に、干しぶどうやざくろ、あんずなどの果物を味付けによく加えるのもアルメニア料理の特徴です。
また、高地では酪農・畜産も盛んで、調理用の油にバターを多用するほか(99%がバター使用だという)、チーズやヨーグルトがよく食べられており、長年、それぞれの家庭で作られてきました。肉、果物、野菜、チーズ…と、新鮮でバラエティな食材を使い、手間ひまをかけた料理こそ、アルメニア料理の身上といえそうです。
また、アルメニアといえば、古くからのワイン産地だったのですが、ソ連時代にロシア人によってふどう畑をつぶされてしまった過去があり、現在ではぶどうの蒸留酒であるブランデーの生産の方が知られています。
アルメニア産ブランデー(アルマニャック)は、かつてヤルタ会談が行われたとき、スターリンがイギリスのチャーチル首相に奨めたところ、大いに気に入られたというエピソードが残っているほど良質で、現在も海外向けに輸出されています。
中でも、『旧約聖書』の中でノアの方舟が漂着されたとされるアララト山(この山は、日本人にとっての富士山のように、アルメニア民族にとって象徴的な存在)の名前を冠したその名も”アララト”という銘柄のブランデーが世界的に有名です。
アルメニア料理の写真
あるアルメニア料理教室で提供されたアルメニア料理の数々。左から、マツナブルトシュ(冷たいヨーグルトスープ)、チキン・アララト(アルメニア風のチキンソテー)とブルグル(挽き割り小麦)のピラフ、くるみ入り団子(デザート)。
アルメニア料理のレシピ

