2010年03月03日

ジャマイカのアイタルフード

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ジャマイカのベジタリアンフード

ジャマイカのラスタファリアン(ラスタ)の人々が食べる自然食・アイタルフード(アイタルの語源は英語のvital=「"生命の、元気が出る"を意味する」のジャマイカ訛り=パトワ語)を実食してみました。

といっても、残念ながらジャマイカに行ったわけではなく、先のニューヨークのカリブ人街で出会っただけなのですが。ラスタファリズムは、ジャマイカが生んだかの偉大なレゲエ・ミュージシャン、ボブ・マーリーが実践したことで世界に広まった、アフリカ(エチオピア)回帰を掲げた宗教的思想運動。ジャマイカの中でもラスタファリズムを率先する人々は、実際はジャマイカ全人口の5%以下(他のほとんどはキリスト教徒)で、決してジャマイカ人のすべてがドレッドヘア姿で(笑)、アイタルフードを食べているわけではないのでした。

さて、今回いただいたアイタルフードは、カラルー(ジャマイカなどカリブ特有の青菜)のソテーやグルテンミート、煮豆、プランテーン(調理用バナナ)、豆腐(生揚げ)、白身魚のフライ、全粒粉を使ったパン...と、写真の通り、盛り合わせで見た目は決しておしゃれでないのですが(笑)、栄養のバランスの取れたすばらしい自然食でした。

お店を推薦してくれたラスタファリアンのジャマイカ人男性は、(われわれを中国人と思ったのか日本人と思ったのかわからないけれど)「君たちの国の精進料理と一緒だよ」などといっていました。なるほど。宗教・思想に発した菜食料理ということで、発想も似ていますよね。

ちなみに、アイタルフードは、ラスタファリズムの聖典である「旧約聖書」にのっとって、ユダヤ教やイスラム教のように豚肉、鱗のない魚や甲殻類などを食べることを禁止しているのですが、肉はダメだけれど魚はオーケーなど、人によって捉え方が多少アバウトな(笑)ようです。

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別盛りのアイタルフード。トップに見えるのはプランテーン。右写真はお店。ジャマイカ人は、言語や食べ物に共通しているものが多いことからであろうか、バルバドスやトリニダード=トバゴなど他の旧英領西インド諸島の移民と同じエリアに集まって暮らしている。街にはレゲエやスティールドラムのカリプソが流れ、まさに"カリビアン村"の様相。食材店の店先では味見のおまけをくれたりと、人々は気さくで下町っぽい、いい雰囲気だった。


お店では、デリのように好きなおかずを選んで、パックに詰められるだけ詰めてくれます。これで7ドル程度。こちらでは安い部類のようです。

ほかにこの店オリジナルの、オクラをジューサーでひいて豆乳と混ぜたネバネバのオクラ・ドリンクなどという、これまた一見、珍奇かつヘルシーな飲み物もありました(たくさんは飲めませんが、けっこうイケる味でした)。

で、肝心の味もおいしかったです。全体的にほどよい薄味(一説によると、塩分など自然から摂れたものではないミネラルを加えることを禁じているという)で、素材の味が生かされた健康的な味わい。どこか精進料理に通じるものがありましたが、アメリカ独立戦争の頃に誕生したアメリカ料理であるマカロニ&チーズがメニューに含まれていたり、時々ケチャップ風な味が含まれているのはアメリカナイズされたためでしょうか(ちなみに、"Zen Palate"などニューヨークの精進料理風なアジアン・ベジタリアン・レストランの料理にも、ケチャップ味が混じっていたりします)。

パックにぎっしりと詰めてくれて、食べきれないかも...などと最初は思っていたのですが、味がいいし、まったく胃にもたれないので、その場でほぼ完食(笑)。まさに「元気の出る」食事でした。

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ラスタの人々はジャマイカの中でも少数派ということで、旧英領カリブ諸国人街のレストランでも、一般的なジャークチキンや、アキー&ソルトフィッシュといった料理、インド人労働者が伝えたロティ(汁なしカレーを小麦粉の皮で包んだスナック)などの料理、また、(奴隷として連れて来られた彼らの先祖の故郷である)西アフリカ由来の飲み物であるモウビーという樹皮を使った真っ黒く甘いジュースや、ジンジャービール(ルートビア)を出す店がほとんど。アイタルフードの専門店が決して多いわけではありません。

コマーシャリズムに躍らさせたような、思想の入った菜食・自然食(たとえば、マクロ何とかとか、玄米を食べれば健康になる?みたいな)を推奨するのは好まないのだけれど、ここでは、どこかアジア的なアイタルフードがおもしろく、またそれを好んで摂るジャマイカ人たちが、自らの意思でアメリカに移住した自負と、目的意識をきちんと持って生活しているように思えて、親近感を覚えたのでした。


profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki


e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作: 「しらべよう!世界の料理」全7巻 (ポプラ社 2017)


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コメント

Fukuiさん
貴重なコメントをいただき、ありがとうございます。

ファッションとしてのレゲエとともに語られることの多いジャマイカ文化ですが、実際にラスタファリズムを実行しているジャマイカ人に出会うと、必然というか、ごく自然な印象で、ハッとしますね。

ジャマイカ女性が経営するJAMROCK CAFEは要チェックですね!

  • 2010年03月24日 11:23

私もラスタ、アイタルの思想から菜食主義になった者です。
自然と共に生きるラスタの思想は、現代にこそ注目されるべきライフスタイルだと思います。

最近、原宿にJAMROCK CAFEというジャマイカ料理のお店がオープンしました。
イヴォンヌさんというBIG MAMAが作ってくれるジャマイカ料理は、アイタルをはじめベジタリアンにも楽しめるものです。

http://jamrockcafeonline.com/

  • Fukui
  • 2010年03月23日 11:55

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