月の砂漠|ヨルダン料理|池袋
[ レバノン・シリア・ヨルダン料理 ]

ヨルダン・スタイルのアラブ料理
【池袋】西口を出てすぐのところに2009年12月オープンした、家族経営のアラビア喫茶&レストラン。看板には出ていませんが、オーナー、シェフは中東のヨルダンの方。というわけで、現在、日本で唯一、ヨルダンの地方のアラブ料理が食べられるレストランです。
お店では1週間前までに予約すると、羊の丸焼きの付いたアラブ料理のコースもお願いできます。
おりしも今年は寅年。トラといえば肉食ということで(笑)、年始に肉食女子、肉食男子(?)を引き連れて、砂漠の遊牧民になった気分で、この羊まるごとの宴を味わいに行ってきました。実際には羊(ラム)一匹まるごと(頭部はなし)は市場状況により手に入らないことがあり、一匹分のブロック肉の場合もあるそうです。
料金は8人で38,000円。この価格を人数割りします。8人以上の場合は1人ごとに3000円プラスなので、大勢メンバーを集めた方がお得(詳しくはお店にお尋ねください)。今回は9人で行ったのですが、お料理は食べきれずに持ち帰りをしたくらいで、かなりボリュームがありました。
3時間こんがりと焼いた豪快なラム肉は、臭みがまったくなく、脂もすっかり落とされている上、スパイスが控えめでとてもおいしかったです。羊の丸焼きは、あちらでは特別なお祝いの席などで供されるそうです。
またコース料理以外にも、ディナーセットが1980円-と、なかなかお手ごろな値段。水タバコもあるようです。


コースの前菜ホンムス(ひよこ豆のペースト)と、ごまペーストを使ったテヘイナ。お好みでピタパンにはさんでいただく。


同じく前菜のパセリのサラダのタブラ。パセリも刻むとおいしくいただける。右写真はペルシャ料理のゴルメ・サブズィーに似た、青野菜のペーストと羊肉を煮込んだシチュー。さっぱりとした味わい。


アーモンドとひよこ豆をちりばめた、ヨルダン・スタイルのマクルーバ(肉を乗せた炊き込みご飯)と、挽き割り小麦のピラフ、ムジャッダラ。砂漠には米がないため、ベドウィンたちは挽き割り小麦を食べたという。


グリルの羊肉をきれいに切ったところ(左写真)。まるごとの肉は、骨を含んで9-13kgあったそうだ(ワォ!)。右写真はラストのアラブデザート。ピスタチオナッツがたっぷりのバクラヴァや、カダユフなど。
このラム肉のグリルのほかに、ホンムス(ひよこ豆のペースト)、タブリ(パセリサラダ)、テヘイナ(ゴマペーストとトマトなどの野菜の和え物)、ファスリアサラダ(豆サラダ)といった前菜と、ヨルダンスタイルのムジャッダラという、砂漠の民ベドウィンの挽き割り小麦を使った肉乗せピラフ、マクルーバ(アーモンドとひよこ豆をちりばめて、焼いた羊肉を乗せたバスモティ米の炊き込みご飯)と、アラブのデザート、飲み放題のミントティーが付いてきました(料理の内容は日によって変わるようです)。いろいろな意味での素人っぽさを含めて、基本的に家庭料理なのでしょう。
また、肉を含めて食材はすべてムスリム(イスラム教徒)のためのハラールフードで、異教徒の私たちも食材の品質に安心できます。また上記のような理由でメニューにアルコール類はありませんが、店内でお酒を飲むのは構わないそうで、コップ代として1人100円かかるほかは、お酒の持ち込み代自体は無料とのこと。これは良心的ですね。
難点をいえば、電話での応対などを含めてマネージメントがやや不慣れなこと(これはいずれ解決されると信じたいです)。日によって味にややムラがあること。またクラブなどが近くにある雑居ビルの2階にあって、ビル周囲がやや猥雑な雰囲気。そして入口が少しわかりにくいことでしょうか。


雑居ビルの裏側から入る入口はちょっとあやしげなのだが、店の内部は、窓が一面に開けていてフロアも広々とし、いたって健全。アラブのエキゾチックな雰囲気が満載で、中央に飾られたオアシス風のやしの木。右写真はオーナーのアルコロン・ハレッドさん。お店のフロアのデザインをすべて手がけたアーティストでもある。またお店にはハレッドさんの日本人の奥様や、かわいらしいお嬢さんがいることも。池袋チャイナタウン(?)に隣接したロケーションからは意外だが、家庭的なお店なのだ。
ヨルダン川に近いイルビット出身のオーナー、アルコロン・ハレッドさんはもともと写真学の専門家であり、あちらの大学から日本の文化庁に招聘されて来日されたそう。日本語のフォローは日本人の奥様やスタッフの女性がしてくださいます。お店に飾られた写真や絵画、おしゃれでアラビアらしいインテリアデザインは、すべてハレッドさんの手になるものとのこと。麦の穂(本物)をウォールデコレーションにしてライティングした演出などセンスがあるなあと思いました。
さて、ヨルダンは王国なので、日本の皇室とも交流があり、ヨルダン人の方はとりわけ日本人に親しみを持っているのだとか。私自身の体験でも、以前北アフリカを旅行していたとき、あるレストランで親日家のヨルダン人の方に出会ったことがありました。
そういえば、あの美しく聡明なラニア王妃は、ヨルダン王の妃でしたね。またヨルダンは、ペトラ遺跡に代表される世界遺産でも有名です。
靴を脱いであがる、じゅうたんを敷き詰めたチャイハネ式のコーナーが、畳文化の日本人は心地がよく(笑)、そこでは、まるでアラブの家庭に招かれたような雰囲気が味わえますよ。

最近、日本ではトルコ料理レストランがずいぶんと増えました。ヨルダンの料理は、陸続きのレバノンやシリア、パレスチナとともに東地中海のアラブ料理ということで、基本はほとんど一緒です。トルコと似ていてもちょっと違うそれらアラブ料理には、古くからの高度な文明に裏打ちされた、すばらしい食の世界が広がっています。
脂っこいと誤解されがちなのですが、実際は(少なくとも家庭料理は)、肉のほかに、野菜、豆をたっぷりと使ったバランスの取れたヘルシーさ。白ゴマペーストや微量のスパイスの繊細な味わいが何ともいえません...。日本人の口にも合うもので、特に女性には本当におすすめしたいです。
池袋にはほかにもアラビア料理レストランがありますが、日本でもトルコ料理とともに、アラブ料理のファンがもっと増えてくれるといいなぁ、と思っています。
→参照:ヨルダン料理について
月の砂漠
東京都豊島区西池袋1-26-5 東山ビル2F
Tel. 03-3980-7057
http://www.tsukinosabaku.com/
■営業時間:11:00-23:00 (ランチは現在予約制)
■定休日:不定休

e-food.jp代表、郷土料理研究家、コラムニスト。主な著書:『見て、読んで楽しむ 世界の料理365日』(自由国民社 2024)、図鑑NEOまどあけずかん『せかいのりょうり』監修(小学館 2021)、(誠文堂新光社 2020)、『しらべよう!世界の料理』全7巻(図書館選定図書・ポプラ社 2017)。
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