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2008年06月27日

トラットリア・ファビアーノ|カラブリア料理|大井町

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とうがらしを多用したイタリア料理

【大井町】珍しい南イタリア・カラブリア料理の専門店。ベテランのオーナーシェフ吉田さんのこだわりが光るレストランです。

写真は、こちらに来たらぜひ食べていただきたい、手打ちフィレイアの豚肉のラグー(1480円)です。

このくるくるっとしたパスタのフィレイアは、カラブリアの伝統パスタで、1本1本手で巻いて作ったという自家製。うどんのように太くて厚い生地のパスタと、ぽってりとした田舎風のラグーソースがやみつきになりそうです。ほかにも料理には、大ぶりな細長い赤たまねぎなどカラブリア産の素材がいろいろ使われています。

イタリア半島のつま先部分にあるカラブリアの料理の特徴は、とうがらしを多用すること。内陸部は険しい山脈で囲まれているため、イタリアの他の地域から影響をあまり受けず、独特な食文化をはぐくんできたといいます。とうがらしのおつまみ、たとえば、とうがらしのペーストに、とうがらし入りのジェラート...。とうがらしのペーストなどは、まるで北アフリカのハリッサのようです。

というわけで、店内にもいたるところにとうがらしが飾られていました。

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突き出しからいきなりとうがらし。さくらんぼのようで可愛いのだが、しっかり辛い。右写真はスペルト小麦のリゾット。トマトベースでもったりした味。スペルト小麦の歯ごたえがクセになりそう...。

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熟成発酵しらすをトッピングしたブルスケッタ(ロサマリーナ・ランドゥイア・ケッカ)。発酵食品特有のあとを引く味わい。右写真はトリッパなど内臓のトマト煮。こちらもいかにも田舎風だ。

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ニューカレドニアの"天使の海老"を使った香草グリル。ぐるっと海に囲まれたカラブリアは、山の幸だけでなく海の幸も豊富。ちなみにメニューは、季節の旬によって、多少、変わるとのこと。

右写真は店内に飾られたカラブリアの地図のタペストリー。イタリア半島のつま先部分をしっかり陣取っているのがわかる。同じカラブリアでも海岸部と内陸部では文化的に違いがあるという。起伏のある山が続く内陸部は、産業も文化財も少なく、昔は貧しい地域だった。ただ、外界と交流が少なかった分、南イタリアの中でも独特な文化が残ることになったという。

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カラブリアならではのデザート。左写真はご想像の通り、とうがらしを使ったセミフレッド。「甘くて、辛くて、ほろ苦い、まるで人生のような?!味わい」とは、そのキャッチフレーズ。カラブリア特産の甘草も使われている。右写真は甘草そのままのジェラート。こちらも甘いような苦いような、不思議な味わい。


イタリア料理レストランも、差別化をはかるために地方の郷土料理を専門にするお店が増えてきました。しかしながら、「カラブリア出身のイタリア人も、現地ではすでに失われてしまった昔ながらの手法の料理を見て泣いた」というほどの、こちらの手間のかけ方はなかなか真似ができないかも。

「イタリア料理用語辞典」(白水社)の著者のひとりであり、カラブリア州のレストランで修行した吉田シェフ(現在は、営業時の厨房は若いスタッフにまかせている様子)のカラブリアへの熱意と愛情をひしひしと感じます。

イタリアの中では影が薄かったカラブリアも、サッカーの中村俊輔選手が所属していたセリエAの"レッジーナ"の所在地として、近年サッカーファンにはちょっと知られる場所になりました。「それがうれしい」と吉田さん。たしかに、10年前はカラブリアといわれても、日本ではほとんど誰も知らなかったのですから...。

カラブリアの料理に興味があると伝えると、本当にうれしそう。フロア接客の忙しい時間をぬって熱く語らう吉田さんに影響されて、私も何だか、未知のカラブリアに行ってみたくなったのでした。

参照
カラブリアの料理について


トラットリア ファビアーノ
品川区大井1-49-12 ライオンズマンション1F
Tel. 03-3777-8646

■営業時間 Open: 月?土11:30-15:00(LO14:00)、18:00-23:00(LO22:00)、日・祝17:30-22:30(LO21:30)
■定休日 Close: 無休

※ランチタイムは一般的なイタリア料理のようです。



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profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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