2005年10月19日

ムサカ レシピ|ギリシャ他

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ギリシャのじゃがいもの重ね焼き

ムサカは、中東が発祥といわれ、現在ではギリシャのほか、トルコやエジプトなどの地中海東部一帯や、バルカン半島でポピュラーなオーブン料理。一度食べると、やみつきになるほどおいしい一品です。

ムサカには地方により多数のバリエーションがありますが、夜、食べても胃にやさしく、また、なるべく簡単にできるようにアレンジしてみました。肉は、トルコなどイスラム教徒の多い国では牛肉や羊肉がポピュラーですが、キリスト教徒の多いギリシャなどでは、イスラム教でタブーとされている豚肉を使うこともあります。

【材料 (4人分)】

牛または豚ひき肉 120g
タマネギ 半こ (みじん切り)
ナス 2、3本 (皮つきのまま5-7ミリほどにたて切り)
ジャガイモ 2、3こ (5-7ミリほどにたて切り)
トマトペースト 400ml (市販の缶入り1缶分)
ホワイトソース(ベシャメルソース)  400ml(市販の缶入り1缶分)
ヨーグルト (お好みで適量。ホワイトソースと混ぜて使用)
チーズ (お好みで。パルメザンチーズやモッツァレラ、細切りされたピザ用の溶けるチーズなど) 適量
スパイス
 (ナツメグ、またはシナモンやクローブ。組み合わせてもOK。3種類とも入ったミックススパイスのガラムマサラが便利) 適量
固形スープの素 1こ
月桂樹の葉 1枚
塩、コショウ、オリーブオイル 適量
パセリ(みじん切り) 適量

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【作り方】

1.ジャガイモを皮付きのままゆでるか、電子レンジで火を通し、皮をむいてスライスする。

2.オーブンに薄切りしたナスを並べ、オリーブオイルをハケなどで薄く塗って10分ほど焼く。

3.別のフライパンにオリーブオイルをしき、タマネギを炒め、火が通ってタマネギが透き通ったら、牛ひき肉を加えて、肉の色が変わるまでさらに炒める。

4.ミートソースを作る。3にトマトペースト、スパイス、固形スープの素、月桂樹の葉を加えて中火で15分ほど煮込み、最後に塩とコショウで味を調える。

5.ホワイトソースを用意する(出来合いの缶入りのものを使うときは、好みで、分量を減らした分、ヨーグルトを加えて混ぜても)。

6.耐熱皿または金属皿にスライスしたジャガイモを並べ、その上に4のトマトソースをかけ、その上にナスを並べ、その上にホワイトソースをかけ、その上にチーズをまんべんなく散らす。

7.6を200度のオーブンで20分ほど焼き、焼き上がりにパセリをちらしてできあがり。

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ムサカの具の重ね順について。右図は、1種類ずつの具を重ねたシンプルな基本形ですが、同じ具を何層にも重ねて厚くすることも。また、ナスを一番下にして、じゃがいもにマッシュポテトを使うこともあります(じゃがいもを下に敷いたこのレシピは、あるギリシャ人のお母さんの手法に沿ったもの。いずれにせよ、最下になるのは、広い面としっかりした土台を持った具であればよいと思います)。いろいろと試してみてください。


【おいしく作るためのTIPS】

ミートソースについて

ミートソース(トマトペースト+ひき肉&たまねぎ)に使うトマトペーストは、トマト缶で自家製が作れます。作り方は、鍋にオリーブオイルをしき、おろしたニンニク1かけを香りがたつまで炒め、そこにトマト1缶分、塩小さじ1を入れ、トマトをつぶしながら15分ほど煮詰めてできあがりです。生のトマトを少し混ぜると、フレッシュな味になります。

ミートソースは、時間が許せば15分といわず、肉に味がしっかりしみこむくらい、じっくり煮込んでみてください。

ミートソースをもっと手抜きして(笑)作りたい方は、スパゲッティ用の缶入りミートソースで代用可能です。この場合、牛ひき肉とタマネギは必要ありません。ただし、市販のミートソースは油っこくて味の濃いものも多いので、味が濃すぎると思ったときは、生のトマトを混ぜてちょっと煮込み直すなど、アレンジしてみてください。

ホワイトソースについて

ホワイトソースも、バター、小麦粉、牛乳を使って家庭で作ることができます。作り方は、フライパンを使ってごく弱火でバター50-30g程度を溶かし、ふるいにかけた小麦粉30-50g程度を混ぜ込んで、小麦粉がダマにならないよう、牛乳500cc、またはお好みで牛乳を減らした分のヨーグルトを混ぜて少しずつ加え、塩大さじ1、(あれば)ナツメグ少々で味をつけて、とろみがついたらできあがりです。

時間がないときは、ハインツなどの市販のホワイトソース缶が便利。ただ、私はそのままでは胃にもたれそうだったので、ライトなソースにするために、ホワイトソース缶の1/3ほどをヨーグルトに入れ替えて使ってみました。ダイエットされている方は、さらに軽いローファットもしくはノンファット・ヨーグルトでも。

***

ミートソースもホワイトソースも、作るのは簡単ですし、一度にたくさん作りおきして冷凍しておけば、パスタソースやグラタンなどいろいろ使い回しができます(ホワイトソースは解凍後、少し硬くなっていたら牛乳やヨーグルトで薄めます)。ウチで作った方が自分好みの味にできるし、経済的ですから、できれば自家製がおすすめです。

ナスについて

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現地のムサカのレシピにはよく「ナスを油で揚げる」と書かれているのですが、ナスにかなり油が吸収されてしまいます。脂っこいのが苦手な方は、左上写真のように、ナスにオリーブオイルをハケなどで塗ってオーブンで焼くのがおすすめです。

ナスを具に重ねて焼くときの並べ方について。長四角の金属皿では、切り分けてお皿に盛る時に、ナスの切れ目が横から見えるようになるよう並べた方が、仕上がりがおいしそうになりますよ。

なお、現地にはナスを使わないムサカもあります。

チーズについて

チーズは、現地では使わないことがあったり、地元特産のフェタチーズ(塩気の強い白チーズ)を使うこともあるよう。市販のとろけるチーズでもよいのですが、ひと味、おいしさに差をつけるには、さっぱり味好みには脂質の少ないモッツァレラチーズ、チーズの風味を楽しみたい方にはパルメザンチーズ(粉チーズではなく、パルミジャーノレッジャーノをおろしたもの)、そして、もし手に入れば本場風にフェタチーズ(トルコ産が比較的安価)等を使うとよいでしょう。

スパイスについて

ナツメグやシナモンなどのスパイスは、本場のムサカの味らしくなる決め手。現地ではミントを加えることもあるようです。

同じムサカでも、中東圏に近づくにつれてスパイスを多用する傾向があります。逆にイタリアに近づくと、スパイスは少めか、ほとんど入れないことも(そして、野菜の代わりに平たいパスタを使うと、ラザニアになってしまうわけです(笑)。スパイスはお好みで増減してください。私などはエキゾチックなスパイス味が好きなので、たっぷり入れてしまうのですが...。

スパイスは、ガラムマサラがあればこれひとつでOK。ナツメグやシナモンのほか、クミン、クローブ、ジンジャー、黒コショウなどがあらかじめミックスされた便利なスパイスです、カレーの仕上げなどに使い回しがきき、賞味期限切れにしてしまう心配が少ないので、けっこう愛用しています(ただ、あまり入れすぎるとカレーっぽい味になってしまいますが...(笑)。

ただ、スパイスを使うと、具に味がなじむのに少し時間がかかります。もちろん、焼きたてをすぐ食べてもおいしいのですが、ちょっととんがった風味が気になるかも。そんなときは具を焼く前にラップをかけて、ひと晩、冷蔵庫で寝かしてから焼くか、もしくは、先に作っておいたミートソースを使って焼くと、魔法のようにおいしくなりますよ(前日の残りのムサカを温め直しただけでも、味がなじんでおいしくなっています)。ギリシャ料理レストランのプロのシェフからうかがった秘訣です。

そうそう、秘訣といえば、赤ワインや、中東特産のデーツ(なつめやし)入りの甘めのソース(たとえば広島の"オタフクソース")を、ミートソースのかくし味に加えるのもグッドです。

***

先日、パトリス・ジュリアンさんのレストランの流れを汲む恵比寿の「アイラ」でムサカをいただいてきました。こちらのムサカは肉を使わず、オイルも控えめ、ヨーグルトのソースにレンズ豆という、とってもヘルシーなおいしい"変わり"ムサカでした。これなら、いくら食べてもさほどカロリーが気になりませんね(笑)。

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また最近は、新宿の老舗ギリシャ料理レストラン「デカメロン」でムサカをいただいてきました(左写真)。トマトのスープをあしらい、あっさりしたミートソースとふんわりしたホワイトソース。オーソドックスなスタイルのムサカですが、トップにバーナーで焼き焦げをつけたところが個性的でした。

たっぷりしたボリューム感だけでうれしくなってしまい、もちろんおいしくて、自分で作るときの参考になりました。みなさんもこんな風に素材を自己流アレンジされてみては?

脂っこいと思われがちなギリシャ料理も、ちょっと工夫をすれば、食べやすい野菜たっぷりの料理に。レシピはあくまで簡素版ですが、時間のある方は手をかけて、さらに心のこもったムサカを作ってみてくださいね。



profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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毎度毎度ムサカを作るときは参考にさせていただいております。

というか、印刷してあります^^

本場の味を手軽に楽しめるため、とてもありがたいです。

重いホワイトソースをヨーグルトで調整することでさっぱりとした味わいにする工夫や、一晩寝かすコツなど非常に参考になります^^

自分で作っていて思ったのは、ジャガイモやなすをやや歯ごたえのある仕上げにするとか、もっと量を増やすとか、野菜の存在感を出すと重さを軽減出来て個人的には好みだなぁというところ。

あと、やはりミートソースはフレッシュなトマトとともに自分で作った方が断然おいしいですね!

これからも参考にさせていただきます!
いつもありがとうございます^^


30年くらい前にレストランで食べた時はじゃがいもはマッシュだったかな?なんて考えながら作ってました。 
トマトソースから手作り…やってみました。案外できるじゃん、と満足な仕上がりでした(´∇`)

  • おかあたま
  • 2009年07月10日 08:14

初めまして☆
外食で食べた「ムサカ」が美味しかったので
レシピを検索して来ました^^
凄く参考になりましたので
リンクを貼らせていただきました☆
自分でも作ってみます^^


ロザリーさん、コメントありがとうございます。
私もまた作ってしまいました(笑)。

トマトソースのスパイスにガラムマサラを使うとグーよ、と、ある料理名人から聞いたので試してみたところ、ホントにグーでした?。みなさんもお試しください。

  • yu
  • 2005年10月25日 23:49

3年くらい前。
ムサカ一度作ったらむこう一週間ずっとムサカだったことがあるわ。ナスがすっごい安かった年だったの。
ムサカ、それ以来作ってません。
今ならご近所さんと仲良しだから一食でなくなるかも。


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