2007年01月11日

アールティ|インド料理|神戸

kobeindia_vegitari.jpg

ジャイナ教徒の食事とは...

【神戸・三ノ宮】古くから外国人が居住する神戸・異人館街(北野)付近にあるインド料理店(神戸市内に3軒あるうちの本店)。このエリアには、インド系ジャイナ教徒のコミュニティがあり、こちらのレストランでも、ストリクト・ベジタリアン(厳格な菜食主義)であるジャイナ教徒向けのメニューを提供しています。

上写真は、厳格なベジタリアン向けのターリ(定食)1800円。日本人が普通にお店に入っただけでは、ベジタリアンのメニューは出してくれません。英語で書かれた裏メニュー(笑)をお願いして、オーダーすることになります。

日本でジャイナ教徒の食事が常時味わえるお店があるのは、おそらく神戸のこのあたりだけ(ジャイナ教徒のコミュニティはほかに、宝石店が軒を並べる東京の御徒町界隈にもあり。こちらにも、完全菜食主義の料理を提供するお店「ペジ・ハープ・サーガ」がオープンしました)。神戸には1868年の開港以来、ヒンドゥー教徒に加えて、西インドのグジャラート州出身者(ジャイナ教徒が多い)が暮らしています。彼らは、地元でグジャラティとかジェイン(Jain)と呼ばれているようで、神戸の北野には小さいながらも立派なジャイナ教寺院があるくらいです。

ジャイナ教は、殺生を一切禁止し、平和と誠実であることを解いた、インドで2500年の歴史を持つ宗教。そして、かのマハトマ・ガンジーの生まれ故郷でもあるグジャラートは、ジャイナ教の影響で菜食や断食が根付いた土地。ガンジー自身はヒンドゥー教徒でしたが、故郷の食文化から、晩年は厳格な菜食主義者で通し、断食を実践したといいます。

「肉や魚や卵はもちろん、根菜も食べてはいけない」という教義を持つジャイナ教は、おそらく世界でもっとも食べものの戒律が厳しい宗教のひとつでしょう。ひとくちにジャイナ教といっても宗派によりけりのようですが、カレーに付きもののにんにくやしょうが、たまねぎ、じゃがいもなどは根菜だから、料理に使うことができません。では、教徒たちはどんなものを食べて栄養を蓄えているかというと...。

まず、主たるたんぱく源は豆。そして根菜以外の葉野菜・茎野菜はオーケー。サフランなど根菜でないスパイス類や、ベジタブルオイルも大丈夫。だから、豆カレーや野菜カレーが発達しているようです。こちらのお店も、スパイスの薫り高い豆カレーや野菜カレーが絶妙のおいしさです。

kobeindia_menujain.jpg
kobeindia_menunonvegi.jpg

左がジャイナ教徒向けストリクト・ベジと、通常のベジタリアン向けのメニュー。日本語メニューはなく、肉入り料理のノンベジのメニューのみ日本語版(右写真)が用意されている。日本人客にはこちらが渡されるので、ベジタリアンの食事をお願いしたいときは店員にひとこと声をかけて。

kobeinidia_mamecurry.jpg
kobeindia_vegitablecurry.jpg

メニューでは、カレーの種類を選べる。豆カレーと野菜カレー(上写真)のほか、ほうれん草とパニール(チーズ)のカレーがある。どれもスパイスを使いながら、グジャラート風の甘めな味つけ。ご飯はジーラライス(クミンライス)。サモサにもじゃがいもは使わない。面白いのは、神戸のインド料理店では、ナンにバターを塗らない店が多いこと。

kobeindia_nonbegetari.jpg
kobeindia_shop.jpg

左写真はノンベジのターリ。チキンカレーにマトンカレー、タンドリチキンと、思いきり肉肉しい(笑)。右写真は、お店の外観。周辺には他にもインド料理店が多く、マンションの1室でやっているインド家庭料理レストランや、インド食材店もある。

kobeindia_jaintemple.jpg
kobeindia_sarry.jpg

左写真は、神戸のジャイナ寺院バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院。神戸在住のジャイナ教徒たちがお金を出し合って、1985年に落成された。拝観日が限られており、拝観時間も短いが、一般の日本人も入ることができる。右写真はサリー専門店(ハヤシ サリーの名が泣ける(笑)。いかに辺りにインド人在住者が多いかを物語る店。

ジャイナ教徒はインド総人口の0.4-0.5パーセント(約260万?360万人)程度と少数派だが、結束が固く、"肌にたかった蚊をも殺さぬ"敬虔さ・誠実さゆえか、もともと商才があったゆえか、宝石や貴金属などの商人、また近年ではIT技術者として成功した裕福な人々が多く、国内での社会的地位も高いという。


国際線のフライトの乗客は、宗教や持病ごとの特別機内食を事前にお願いすることができるのですが、私も面白がって何度か頼んだことがありました。ストリクト・ベジタリアンの機内食は、しなしなした葉野菜のサラダだけ、なんて勝手に想像して避けていたのだけれど、実は調理に工夫があって、こんなにおいしかったなんてびっくりです。

食事の戒律が厳しいからといって、おいしく食べてはダメってわけではありませんからね。かえって、「限られた食材でいかにおいしく食べるか」が、ジャイナの人々の長い歴史で生活の知恵として研究されていて、感心するばかりです。

インド料理について
ジャイナ教

余談:
世界のペルシャ料理レストランを集めたサイトPersian Cuisineで、こちらのお店を紹介しているのが気になっています。同じグジャラート州をベースにするパールシー(ペルシャからインドに渡ったゾロアスター=拝火教徒)の料理も裏で提供しているのかしら、なんて想像したり...。次回、来訪時にでも確かめておきます(笑)。


アールティ Aarti
兵庫県神戸市中央区中山手通2-14-13
Tel. 078-222-8665
http://www.rakuten.co.jp/aarti/(通販サイト)

■営業時間 Open: 11:00-14:00、17:00-21:30
■定休日 Close: 月、不定休

※ほかに三ノ宮と三ノ宮駅付近と三ノ宮プレミアムアウトレットに姉妹店あり。



大きな地図で見る



profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki


e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作: 「しらべよう!世界の料理」全7巻 (ポプラ社 2017)


※この記事・写真等はe-food.jpが著作権を所有しています。無許可での転用・転載は絶対しないでください。記事の原稿、写真は販売しております。→詳細「利用規約」

このエントリーをはてなブックマークに追加


コメント

トラックバックURL:

この記事のURL:


カスタム検索

世界料理ブログ(新)

RSS フェイスブック ツイッター
e-food.jpについて
お問合せ
コミュニティのご案内