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2009年03月06日

日本産ハラールミートが中東に進出?

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埼玉の食肉場にUAEからお墨付き

在日イスラム教徒の人々が日本国内でハラールミート(イスラムの律法に基づいて解体、処理された肉)を加工しているという話は聞いたことがあるのですが、今度はその日本産ハラールの牛肉を、なんと中東に輸入する計画があるそうです。以下は3月6日付の読売新聞の記事から。


 埼玉からドバイに和牛を売り込め――。埼玉県本庄市の本庄食肉センターが昨年、国内では初めてアラブ首長国連邦(UAE)政府からイスラム教に即した解体処理を行う「ハラール」施設の認証を受けた。

 2月には第1弾として牛肉を出荷。品質や安全性を武器に需要の開拓を目指す。

 イスラム教徒は、律法に基づいて解体、処理された牛肉しか食べることができない。教徒が祈りをささげながら解体し、処理の方法にも細かな決まりがある。このため、イスラム圏の国に牛肉を輸出する際は、各国政府から「ハラール」の認証を受けなければならない。

 本庄食肉センターは、隣接する群馬県にバングラデシュ人などイスラム教徒が多く住んでいることもあり、1996年頃から教徒の団体に場所を貸す形でハラール処理を行ってきた。国内でハラール処理ができる施設を探していた都内の業者から2年前に打診を受け、ドバイへの輸出に乗り出すことを決めた。
...

?「イスラムへ和牛売り込め!埼玉の食肉場にUAEからお墨付き」(読売新聞)より


逆転の発想というか、なかなかおもしろい計画ですね。今日はまた「米和食ブーム、地方産品に商機=赤みそ、茶などに関心」(時事通信)という、世界で注目を浴びる日本産食品に関連したニュースも...。

そういえば以前も、愛知・岡崎産の八丁みそをユダヤ教徒が食べるのにふさわしいかどうか監査が訪れた、というニュースがありましたっけ。以下は私が旧ブログ(東京アラウンド・ザ・ワールド)に書いた記事の一部です。


「愛知県・岡崎のみそ蔵をユダヤ教徒が監査」。今日の中日新聞に掲載されたこんな記事に目を引かれました。

ヘッドラインにはこう記されています。「岡崎市八帖町の「まるや八丁味噌(みそ)」へ30日、米国内のユダヤ教徒のラビ(律法学者)が視察に訪れた。同社で製造する八丁みそが、ユダヤ教の厳しい食の戒律に適合する品質に保たれているか、監査するのが目的だ」。

アメリカでは、5年くらい前から心臓病のリスクを下げる健康食品として、豆腐やみそが脚光を浴びているとか。今回来られたラビもアメリカ在住者ということでしょうか。ユダヤ教には、コッシャー(コーシェル)という厳格な食の戒律が存在し、屠殺の仕方や食べ合わせなどにさまざまな禁忌があります。たとえば、肉と乳製品は一緒に食べちゃダメめ、とか。。。そんな中、ラビ自身がみそ汁やみそを乗せたご飯が大好きで、信者にも勧めているという話は意外だし、ほほえましく思いました。

余談ですが、岡崎市からそう遠くない岐阜県の八百津町は、ナチスの迫害からユダヤ人を救い、"日本のシンドラー"と呼ばれた外交官、杉原千畝の生まれ故郷。日本にいるとあまりピンときませんが、シドニーのユダヤ人博物館を訪れたとき、杉原さんの大きな肖像画が掲げられていて、彼らが恩を忘れていないことを実感しました。「自国の文化を愛しながらも他国の人と共感できる国際人としての資質を持っていた」という杉原さんを尊敬したいです。なお、八百津町には杉原千畝の記念館があり、八百津町の公式サイトには、何とヘブライ語の翻訳が用意されています。

八丁みそとユダヤ人。スローフードという言葉が定着して久しいですが、日本を代表する伝統的な食材が、海外で脚光を浴びるのは誇らしいですね。そして何よりも、普段われわれとほとんど接点のないユダヤの人々が、みそを通して日本に近づいてくれたことが、何だかうれしいです。
(2004年10月14日)


昨日、幕張メッセで開催されたFOODEX JAPANに行ってきたのですが、バイヤー側からすれば、正直、商品も展示会自体もマンネリ化してつまらなくなったなぁという印象でした。というわけで、売り手の方は、矛先を変えて商品の需要を見抜き、しかるべきニッチな、しかしビッグな世界のマーケットに売り込んだ方が、ビジネスとして意外とおもしろい展開があるのでは、などと思っています。いかがでしょう(笑)。


profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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