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2006年04月29日

アンゴラへの扉

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W杯に出場するアフリカの国

アンゴラ大使館より、アンゴラについて日本語で詳しく解説した本「アンゴラへの扉」を贈呈いただきました。6月のワールドカップ開催も近づいてきたいい機会ですので、"黒いアンテロープ"の異名で代表チームがW杯に出場するアンゴラについて、紹介してみましょう。

アンゴラは、アフリカ南西部にある共和国。首都はルアンダ。2000年に在京アンゴラ大使館が開設されたのに続き、2005年には在アンゴラ日本大使館が開設された、日本とのつながりも深まりつつある国です。

2002年には、27年にもおよぶ内戦が締結され、110億バレルとも推定される石油、2兆立法フィートとも推定される天然ガスの埋蔵量や、2007年には年間1500万カラットの生産が見込まれているダイヤモンドの貿易などで、経済的発展が期待されています。

それに、豊かで起伏に飛んだ自然や、さまざまな動物たち、また、人類のもっとも原始的な民族を代表するというコイ・サン族や、遊牧民のム・ウィーラ族、オヴァンポ戦士族の村など、観光地としてもこれから注目されそう。

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左写真は、レストランやリゾートホテルなどが立ち並ぶ近代都市に発展中の首都ルアンダ。右写真は、アンゴラにおける部族の宝庫ぶりがうかがえるワンショット。

文化的な側面からアンゴラを語るときに、忘れてならないのは、500年近くにもわたって支配されていた旧宗主国ポルトガルの影響。現在も公用語にポルトガル語が用いられ、現首相のフェルナンド・ダピエダデ・ディアス・ドスサントス氏のように、人々にポルトガルの姓名が使われています。

ポルトガルの旧植民地の料理レシピを紹介した、アメリカ・テネシー州にあるヴァンダービルト大学のポルトガル語教授チェリー・Y・ハミルトン著の「キュイジーヌ・オブ・ポーチュギーズ・エンカウンターズ」には、"ムアンバ"(アンゴラ風チキン)、"カンジーカ"(コーンプディング。ブラジルでも、6月の収穫祭「フェスタ・ジュニーナ」の食べ物としてポピュラー。使用するのは白いとうもろこし)のようなアンゴラの料理が紹介されています。在日アンゴラ大使館でも、アンゴラ文化を紹介する一環として、アンゴラ料理のパーティーが開催されているようです。

ちなみに、かつてアンゴラが、同じくポルトガル領だったブラジルへの"奴隷の積み出し港"だった歴史を考えると、現在ブラジルの国民食といわれている"フェジョアーダ"は、アンゴラにルーツを持つ料理かもしれません(ちなみに、アンゴラの首都ルアンダでも、ブラジルのリオのようにカーニバルが行われるんですって)。

アンゴラ料理について(?世界料理マップ)

アンゴラとブラジルは、大西洋をはさんだ向かい側同士で、今も人々の往来が盛んなよう。音楽的にも、アンゴラは、ポルトガルや、ブラジルとのつながり(料理と同様、ブラジルに渡る前のアフリカ音楽の源流ともいえる)に加えて、アフリカ一番の音楽大国といわれるコンゴの隣国という面白さがあるんです。

また、意外なのは、水源の豊かさ(5/27・28に開催する「ワールドカップ料理会?アフリカ特集」では、アンゴラの料理とともに、大使館より特別にご提供いただいた、とても珍しいアンゴラ産のミネラルウォーターをお出しする予定です)。

「日本において、アンゴラ共和国は、独立後の暗い側面について知られています。反面、その民を高く評価するような出来事で満ちている歴史や、アフリカの威厳を取り戻すような行い、寛大さやホスピタリティ、あるいは強く近代的かつ繁栄した国を建設するその不屈な理由は十分に知られておりません」。

駐日アンゴラ大使のヴィクトル・リマさんは、前書きのあいさつの中でこんな風に語っています。私は各国料理のサイトを運営しているもので、各国の大使館の方々とお話しする機会があるのですが、127ページにおよぶこのハードカバー本からは、日本の人々にきちんと正しいアンゴラの現状を知ってもらいたいという真摯な気合、いやちょっとした気迫すら感じます。

私たちも、日本の一部マスコミが伝えてきた、悲惨な内戦国といった偏ったアンゴラの姿だけでなく、本来のアンゴラの魅力的な面を知っておきたいものですね。



profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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  • ホタル
  • 2011年02月24日 22:19


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