2005年10月31日

今年は、お菓子にも名を残すフランスの有名な美食家、ブリア・サヴァランの生誕250年の年。それにちなんで、日本でも「飲むことと食べること」と題して記念のイベントが行われています。
10月29日には、飯田橋の東京日仏会館内のレストラン「ラ・ブラスリー」で、14世紀フランス宮廷の料理人タイユヴァンのレシピを再現した「中世の宴」が催されました。ふだんなかなかお目にかかることのできない、珍しいフランス中世のブルジョワ料理を、私も勉強をかねていただいてきました。
レストランの入り口には、教会で用いられるような水がめ。ゲストはその水で両手を清めてから、長テーブルに着席します。ろうそくの光のようにほの暗く落とされた照明の下、中世の宮廷音楽のBGMが流れ、雰囲気は満点。「今宵、みなさまは14世紀のフランス宮廷のお客様です」という挨拶とともに、いよいよ宴の始まりです。
メニューは以下のようなものでした。
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Potage / Potage au lait d'amandes
スープ / アーモンドのポタージュ
Entree / Haricot de mouton
前菜 / 仔羊のミント煮
Rot / Cailles farcies a la broche
主菜 / 鶉(ウズラ)肉のチーズ詰め
Entremet / Blanc-manger italien d'Outremont
アントルメ / ブランマンジェ
Desserte ou Yssue de table / Pate de poires
デザート / 洋梨のパテ
Boute hors / Zestes d'orange confits
プティフール / オレンジのコンフィ
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ほかに食前の甘い赤ワインと、デザートと一緒に飲むスパイス入りの甘い赤ワイン、パンが供されました。


宗教的なものを思わせる、パンの乗った食前の赤ワイン。そして、アーモンドのポタージュ。中世フランスでは、鍋で煮たものをすべてポタージュと呼んでいたそう。主な材料は、たまねぎのみじん切りとアーモンドプードル。これくらいならウチでも作れそう?


仔羊のミント煮と鶉肉のチーズ詰め。前者はモンゴルの羊の塩煮のような、素朴な料理。胡椒が使われていないせいか、肉には臭みが。後者は、クリームチーズを詰めた鶉に月桂樹の生葉とベーコンを巻きつけたもので、プリミティブだが、近代の料理に少し近い。


ブランマンジェと、オレンジのコンフィ。前者は、今日のようなお菓子ではなく、細切れにしたラードと牛乳、パン、米、アーモンド、きのこ、鶏肉、砂糖を煮た料理。今回のメニューの中で、もっとも中世らしさを感じるメニューだった。後者はオレンジの皮のはちみつ漬け。
"アントルメ"は日本語に訳せないそうだが、宴の中でお客様に料理のスペクタクルを見せる部分だったという。今日の結婚式のウェディングケーキなどは、アントルメの名残りともいわれる。


デザートの洋梨のパテ。今日のパテを想像していたら、まったく違うものだった。フランス式の厚皮のパイに、甘く煮込んだ洋梨をはさんだもの。シナモンとしょうが、砂糖入りの赤ワインと一緒に食べる(これがよく合う)。いい意味で予想を裏切られた、おいしいデザート。
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メニューは、当時のレシピをなるべく忠実に再現したといっても、おいしくいただけるように、若干アレンジがしてあるようでした。また便宜上か、料理は、ロシア・スタイルを取り入れた現代のフランス料理のように1品1品運ばれてきましたが、本来、中世にはフォークもスプーンもなく、テーブルにいくつかの大皿料理がいっぺんに持ち込まれ、ゲストは、好きな食べ物を取り分けて手で食べていたのだそうです。
コロンブスによって新大陸が発見される前の14世紀(日本は室町時代)のフランスには、ペルー原産のトマトやじゃがいもはまだありません。また、フランスよりも文明の発達していたイタリアからカトリーヌ・ド・メディシスがフランス王室に嫁ぐ以前なので、今のフランス料理のように洗練されていないことがよくわかりました。
それでも、14世紀にあって、栄養学や医学をふまえた胃に負担がかからない料理の出し方や、食事をより楽しめるようアトラクションに工夫がされていたのは驚きです。
今回のイベントは、「ラ・ブラスリー」のシェフの方々が総がかりで、10日から1週間かけて準備された賜物だったそうです。本当にお疲れ様でした。ふだん何気なく口にしているおなじみの料理が、どのような歴史経緯で進化していったのかを見つめ直せるこのようなイベントは、とてもおもしろいですね。またどこかで開催してほしいな、なんて思っています。
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トラックバック時刻: 2006年12月14日 20:47
モットーは「食は最高のコミュニケーション手段のひとつ」。言語や習慣の違いを越えて"おいしい!"で人と人をつなぐ世界の料理の魅力を広めたい思いから、珠玉の料理を求めて、拠点の東京をはじめ、日本全国・世界各地のレストランや食スポット等を取材で飛び回っております。
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