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4/28/2002

タコスとサモサとプルコギの街

クィーンズ・ジャクソンハイツ(ラテンアメリカ諸国、インド、韓国人街)


街の躍動感、生活感、そして現地らしさ...。そんな点から、ニューヨーク最強のエスニックタウンは、クィーンズのジャクソンハイツではないかと思います。

道歩く人の活気は、東京の大久保に通じるものがあるかも。かつて、友人のアパートがここジャクソンハイツにあって、ニューヨークに行くたびに泊まらせてもらっていたのですが、その時は全然、目に入らなかったコロンビアやメキシコ料理レストランやインド人街がこんなにも魅力的だったなんて...。エスニックに興味のない人間にとっては、ここがレトロなたたずまいの平凡な住宅街にしか見えないという見本でしょうか。


ラテンアメリカ人街


今回は、ワールドカップ出場国に焦点を当ててエスニックタウン巡りをしていたのですが、ジャクソンハイツは、そういう目的からもまさにパラダイスでした(笑)。

特にラテンアメリカ街。ここはラテンのサッカー好きが集まる場所でした。旅行代理店に入っても、レストランに入っても、テレビのチャンネルはサッカーの試合ばかり。そして、その場に居合わせたみんながテレビに釘づけになってる! 何ていいところなんだ~。マンハッタンの中にいる限りでは、ワールドカップどこ吹く風といった感じだったので、よけいに感銘を受けたのかもしれません。

レストランの方も、ひとつのブロックにエクアドル料理店と、アルゼンチン料理店と、ペルー料理店と、ウルグアイ料理店と、コロンビア料理店と、メキシコ料理店が集まっているという、エスニック料理好きにはこたえられないシチュエーション。

ああ、あのとうもろこし100%のトルティーヤでできた、メキシコの屋台のタコスがニューヨークで食べられるなんて。それに、食材店にはあまたの種類のチリ(とうがらし)が売られている...。そして、値段がどこも手頃。友人からはジャクソンハイツでの麻薬取引きなど不穏な話を聞いていましたが、昼間、歩いている分には、まず問題なし。こんな素敵なところは日本には当然ないし、中南米にもないんじゃないかしら、なんて思ったりしました。


エクアドル料理店 メキシコ料理店 ペルー料理店 ウルグアイ料理店
ラテンの揚げ物屋。ウィンドーを覗いていたら、試食だよ、と揚げボールをくれた。こんな下町っぽい、ラテンの人の優しさが好き。
あれれ、見覚えのある揚げ物が...。これ、エビフライ?
W杯に出場するウルグアイのカフェ。テレビのチャンネルは、もちろんサッカー!
ウルグアイのデザート。カラメルが半分を占める甘ーいフラン(プリン)。
エクアドル・フードのコンビネーション。ご飯、ラムの煮込み、セビッチェ、揚げバナナ。
Tostones (グリーン・バナナのフライ)。エクアドルはバナナの生産世界一だけあって、バナナづくし?
いかにも辛そうな青唐辛子の調味料。つけすぎに注意。
エクアドルのローカル・ドリンク。チェリー・コークみたい?
Jackson Heightsは、電車の高架線の下に大通りがある。どこかレトロな雰囲気。
カラフルなスペイン語のポスター。
コロンビア系の食材店。メキシコ系と張り合っている?
タンゴ・クラブ。街には、昼間でもラテン音楽が絶えない。

インドの世界

ラテンアメリカ人街から角を曲がると、いきなり別世界の南アジア街に激変するのも、ジャクソンハイツのおもしろいところです。通りに流れる音楽はサルサやクンビアから一転してベンガル・ポップスに代わり、スパイシーなカレーの匂いが辺りにただよってきます。道行く人の服装もサリーだったり、クルフィ(インドのアイスクリーム)を手に持っていたり...。

マンハッタンのイースト・ヴィレッジにもカレー屋が並ぶインド人街がありますが、アメリカ人や観光客向けに"演出された"感じのするあちらよりも、インド映画を専門に上映する映画館や、デリーやムンバイの街角にありそうな前払い式の安食堂があるここジャクソンハイツの方が、はるかに現地っぽいです。

また、インドだけではなく、バングラディシュやパキスタン、アフガニスタン・レストランがあったりして、インドの混沌がそのままミニチュア化されている場所ともいえそうです。

私は、今度ニューヨークに来るときは、物価の高いマンハッタンをすっとばしてジャクソンハイツに直行したい!などと思ったほどでした(笑)。

カレー屋が軒を並べる。スパイシーでおいしそうな匂いが周囲にただよい、ふらふらっと吸いこまれそう!
サリーを売る洋品店もたくさん。どれも高価そうなことから、インドのアッパー・クラスの人が暮らしているのだろうか。
あぁ、インドにいるみたい!と思った安食堂の店先のスタンド。スパイスやクルフィを売っている。
クルフィ(インドのアイスクリーム)。ほんのりカルダモン風味の濃厚な甘い味がくせになりそう。


コリアンの世界&アメリカの移民について

ジャクソンハイツには、ラテンアメリカ、インド人街のほかに、小さなコリアン・タウンがあります。大規模なコリアン・タウン(とチャイナ・タウン)は、同じクィーンズのフラッシングにもあるそう。フラッシング駅やジャクソンハイツ駅を通る地下鉄7番線の車内にはアジア系が目立ち、この路線は"オリエント・エクスプレス"ともあだ名されているそうです。

ところで、アメリカの移民といえば、以前、カナダのトロントで、イラクから来たというグロサリーのレジ係の男性とした話が印象に残っています。彼いわく、「アメリカでは、1つのアパートにいろいろな人種の人が住んでいるということがない。自分はカナダが好き。だって、人種に関係なく1つの場所に暮らせるから」とのことでした。

そのあたりの事実関係はよくわかりませんが、少なくともニューヨークのエスニックタウンで思うのは、民族ごとの住み分けがきちっとされているなあということです。

どこに行っても、民族ごとの街が混ざり合っていない=壁があるのは、国策としていいことなのか悪いことなのか、一介の旅人にはわかりません。ただ、イントロダクションでも述べたように、ここニューヨークが、自分の民族のアイデンティティを強く認識する街であることは確かです。

そういえば、ニューヨークには日本人街ってないなぁ。日本の若者がカルチャーに惹かれて住んでいる
イーストヴィレッジや、駐在員が多く住む街というのはあるけれど、生活感ただよう移民の日本人街というのは、皆無ではないかと思います。

今の日本人は経済的に恵まれてますからね。アメリカへ移住してきた人の中には、昔から、貧しさや政情不安などで祖国を捨てなければならなかった人々も多かったはず。エリス島の移民博物館に行ってそう感じました。エスニックタウン巡りをするときには、そんなこともちょこっと頭の片隅に置いておきたいものです。(by ゆ)

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