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コロンビア大使公邸での食事会リポート

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先住民の伝統食材を生かしたスタイリッシュな料理

8月5日、南米コロンビアより気鋭のシェフ2名が来日されるとのことで、ぐるなびippinさんを通して、目黒にあるコロンビア大使公邸で行われたコロンビアの食文化と美食を体験する食事会「Colombian Gastronomy」にお招きいただきました。

来日されたのは、農業エンジニア出身のエドゥアルド・マルティネスさんと、造形美術出身のアントヌエラ・アリサさん。お二人は首都ボゴタでレストラン「ミニマル」とジェラート工房「セルバ・ネバダ」を経営され、シェフとして活躍する傍ら、15年以上もの間コロンビアの文化や生物をリサーチを重ねてコロンビアの食文化や伝統を啓蒙する活動を行われてきたそうです。

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↑シェフのエドゥアルド・マルティネスさんと、アントヌエラ・アリサさん。

コロンビアは、日本の約3倍の国土面積に、太平洋、カリブ海、アンデス山脈、アマゾン流域など南米のエッセンスを凝縮したような6つの地域を擁する国。先住民のほか、スペイン、アフリカ、中東などからの移民を含めておよそ80の民族が暮らしているというのですから、いかに多様で、さまざまな要素がミックスされた食文化であるのかが想像できます。

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↑全権公使のアレハンドロ・ポサダ・バエナさんがコロンビアについてざっと説明してくださった。

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↑コロンビアの位置と、国内の地図はこんな感じ。南米大陸の北西部に位置し、カリブ海、太平洋、アンデス、アマゾン…と多様な地勢を持っているのがわかる。まさに南米らしさを凝縮した国(上地図をクリックするとGoogle mapで地勢が見られます)。

さて、この日は、そんな食材や伝統料理をもとに、お二人のスタイリッシュで斬新なコロンビア料理の数々を堪能させていただきました。

食前酒は、さとうきびの蒸留酒ヴィーチェと、アラサというアマゾン熱帯雨林に生育する酸味のあるフルーツを使ったカクテル。続いて前菜として、コロンビアでポピュラーなチャヨーテ(ハヤトウリ)のカルパッチョが、アンデス地方原産の根菜ヤーコンのピクルス添えで登場。

チャヨーテは現地では通常は煮物にすることが多く、生では食べないそうですが、カルパッチョ仕立てはさっぱりしていて、まさに夏にぴったりでした。シャキッとしたヤーコンの食感も心地よく、お二人のキラリとしたセンスで、これから出てくる料理も楽しみに…。

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↑伝統食材を生かした、前菜のチャヨーテのカルパッチョと特製ピクルス。従来のコロンビア料理のイメージとは違うが、色合いも夏らしくさっぱりと、おいしくいただいた。

コロンビアの人々が愛するとうもろこし粉のエンパナーダ

そしてSegundo plato(2皿目)は、エンパナーダ!(トップ写真)南米のあちこちで食べられている、日本でもおなじみのペストリー料理ですが、小麦粉の皮に牛肉を使うアルゼンチンに対して、コロンビアではとうもろこしの粉を皮に使うのが特徴的で、今回は豚肉とじゃがいもが具に使われていました。

具は他に、海岸沿いではカニの身を使ったり、山岳地方ではアチョーテという赤い天然色素で具を染めたりなど、コロンビア国内でも地域色があるとか。

また、アメリカのシェフで作家のアンソニー・ボーディン氏のテレビ番組”No Reservation(邦題「アンソニー世界を喰らう」)”のコロンビア編などを観ていると、エンパナーダの大きさもさまざまで、いかに庶民に愛されているかがわかります。

今回の大きさは、一等書記官のニコラス・ボテロ・ヴァロンさんによると「中くらい」とのこと。パッションフルーツに似た味の、酸味のあるリロ(Lilo)というコロンビアのフルーツのソースとともに供されて、庶民的なエンパナーダがおしゃれに変身!へええ、と感心しました。

コロンビアのスナックといえば他にアレパというとうもころし粉の薄焼きパンもポピュラーですが、大使館ではエンパナーダの集いを開くこともあるそうで、コロンビア人のエンパナーダへの特別な思い入れをひしひしと感じました。同席した大使館員お二人の、エンパナーダをほおばる時の幸せそうなお顔といったら…(笑)。

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↑エンパナーダの具はこんな感じ。じゃがいもももちろん、アンデス産を使用。ほくほくしていてとても美味。

アマゾンのアリを食べる!

そしてお次は、メインディッシュの「燻製白身魚のトゥクピソースかけ」。1960年代の第2バチカン公会議以前のカトリック教徒は精進料理にタラ(バカリャウ)を食べていたので、カトリック教徒が大多数のコロンビアでも本来はタラを使うのだろうと想像するのですが、それよりも初耳の「トゥクピソース」が気になりました。

トゥクピは、アマゾンの熱帯雨林に育つ野生のキャッサバの根から作った黄色いソースで、生の状態では有毒なものを、長時間熱を加えて解毒しているそう。もともとはアマゾンの先住民が薬代わりにも使っていた健康食で、とろみのあるソースは塩分なしでもコク味があり、隣国ブラジルでもヘルシーさで注目を浴びているそうです。未知の味のはずなのに、なぜか親しみを感じたのが不思議でした。

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↑メインの燻製白身魚のトゥクピソースかけ。よく見ると…。

そして、さりげなく飾られた”サンチャインチ”という野生ピーナッツや、フルーツソースなどに混ざって、あれれ、何か黒いモノが…。そこですかさず、アレハンドロ全権公使がいたずらっぽい笑顔。トッピングされていたのは、なんと2種類の「アマゾンのアリ」だったのでした。うわあ、びっくり。

とはいっても、しっかり炒ってあるので、噛むとプチっと弾ける、ということもなく、意外と違和感なく食べられました。大きな方のアリは、目をつむって食べれば居酒屋のおつまみの川エビといわれても遜色ない味。また小さな方のアリは、柑橘系のさわやかな酸味(別名レモン・アリと呼ばれるそう)が絶妙なアクセントになっていました。これもまた驚きです。

今やFAOもたんぱく源として推奨する昆虫食。かのコペンハーゲン発、今年東京に上陸したレストラン「ノーマ」でもボタンエビの上にアリが乗った料理が話題になっているし…。ということで、アリ料理は今や、流行の最先端をいった料理なのかも。

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コロンビアは”スーパーフード”の宝庫

ラストのデザートは、「スイートコーンケーキのプラムソース添え」。コーンケーキのモソモソ感がいかにも南米っぽく、不思議と懐かしい味。大使館の方々にとってもおふくろの味だったようで、夏の宴のひとときを、ともに遠いコロンビアに思いをはせながら締めくくったのでした。

こちらのプラムソースもそうですが、料理の中に、コロンビア特産の酸味がきいてフレッシュなフルーツのソースの数々が随所に活かされ、食材をさらにぴしっと引き締めていたように思います。

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↑スイートコーンケーキのプラムソース添え。典型的な南米のとうもろこし味のケーキに、酸味のあるプラムソース、フレッシュな牛乳の白チーズを加えて、洗練されたシャープな一皿に。

そして、コロンビアコーヒーと、アニスの香りが印象的な食後酒のアグアルディエンテをたしなみつつ、解散。この場をアレンジしてくださったぐるなびのスタッフの方々に感謝しつつ、食通のippinキュレーターのみなさん、そしてコロンビア大使館のみなさんと貴重な食事の機会を通じて交流できたことを幸せに思いながら、帰宅の途についたのでした。

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↑まさに、本物の100%コロンビアコーヒー。

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↑アニスの香りがするさとうきびの蒸留酒アグアルディエンテ。トルコの「ラク」やレバノンなどの「アラック」、ギリシャの「ウゾ」を彷彿とさせる香りだが、それらと違って水を加えても濁らないそう。他の中南米の国ではアグアルディエンテにアニスを使わないので、コロンビアに来た中東移民が伝えたものかもしれない。

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↑きらびやかで素敵な食卓でした。

かつてコロンビアといえば、麻薬密売組織の暗躍でネガティブにイメージされがちな国でしたが、90年代以降、治安はかなり改善され、観光客を呼び戻していると聞きます。

変化に富んだ美しい自然と多様な民族、そして黄金郷エルドラドに代表されるような歴史遺産など見どころは満載で、大使館の方々の、現在のコロンビアのことを食を通じて日本人の方々にも正しく知ってもらい、その魅力を伝えたいという想いがひしひしと伝わってきました。

また、アマゾンやアンデスの先住民の伝統食材の数々は、肉ばかりで脂っこいとか、塩辛くて大味といったステレオタイプな南米料理への先入観を覆すものでした。コロンビアは実は、健康にいい、いわゆる”スーパーフード”の宝庫であり、将来の可能性も広がりそうです。

今の日本ではメジャーとはいいがたいコロンビア料理ですが、ニューヨークでは、コロンビア人の移民街から誕生した伝統食のお店がおいしいとニューヨーカーの評判になり、来年ブルックリンにオープンする話題のフードセンターに進出するといったケースもあります。今後の日本での展開に期待したいところですね。私も応援しています!

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青木 ゆり子

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、料理&旅行コラムニスト、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長、内閣府認定 公益社団法人 全日本司厨士協会会員、世界司厨士協会連盟会員。

雑誌記者、企業のWEBディレクターを経て2000年にサイト世界の料理 総合情報サイトe-food.jpを創設。以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどを通し、国内外の郷土料理に秘められた魅力を広め、おいしい食べもので日本と世界を相互につなぐ社会貢献を目指して活動。

著作:「しらべよう!世界の料理」全7巻(図書館選定図書 ポプラ社 2017)
「日本の洋食 ~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房 2018)

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