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そば米雑炊|徳島県・祖谷地方

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“山奥の秘境”祖谷地方の郷土料理

徳島といえば、淡路島を経て関西に近く、鳴門のうず潮や阿波おどりのイメージがまず浮かびますが、内陸の祖谷(いや)地方は、いわゆるステレオタイプな徳島の印象とはまたちょっと違った顔を持つ地域。”四国三郎”の別名を持つ吉野川が流れる四国の中央の山岳地帯、冬場は通行止めになるほど雪が積もり、平家落人の里に加えて、赤子の泣き声に近づいた人がかわいそうになっておんぶすると、石のように重くなってその人を殺めてしまうという妖怪「子泣きじじい」の伝説まで伝わる、まさに”山奥の秘境”でもあります。

大歩危駅

大歩危駅

まず降り立ったのは、日本三奇橋のひとつで重要有形民俗文化財の「かずら橋」に向かう入口でもある大歩危(おおぼけ)駅。渓谷を眺められる遊歩道のある無人駅です。夕暮れになると人の姿はまったくなく、電車の運転手さんが「この先は何もないから、今のうちに飲み物を買っておいた方がいいよ」などと声をかけてくださる始末…。

心細さを助長するような吹きすさぶ風や、無人駅の駅舎の片隅に佇む子泣きじじい駅長に思わずゾゾっとしながらも、祖谷にやって来た目的は、土地の郷土料理「そば米雑炊」に出会うためです。

大歩危駅から向ったのは、電車で20分ほど行った祖谷で一番大きな町、阿波池田。高校野球の常連として知られる徳島県立池田高校のある町であり、幕末から明治にかけてたばこ製造で繁栄した名残りである日本家屋に取り付けられた「うだつ」の町並みで有名なところでもあります。ここまで来ると人もいて、ホッ。目指すは、その阿波池田で祖谷地方の郷土料理の伝承を目指ざす、その名も「郷土料理 うだつ」さんです。

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広い酒造蔵の一部を改造した、天井の高いの立派な建物にびっくりしながら、ちょうどお店にいらした取締役の眞野保子さんにそば米雑炊のお話をうかがうことができました。眞野さんいわく、「そばが名産という土地は、たいてい昔は土地がやせていて高知の少ない貧しかった地域が多いですが、山に囲まれた盆地である祖谷も例外ではなく、そばの実をお米代わりに食べるしかなかったんです」。

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確かに、信州や岩手など、そばの産地は、昔はそばしか育たないような山がちの地域が多いですね。それは万国共通で、海外でも、たとえばブータンの高地ではシルクロードの影響を受けた麺料理の”ブッタ”など、そばが食べられているし、ヨーロッパにもスロベニア(そばの実入りソーセージ”アイドウカ”)、ロシア、ウクライナ(カーシャ)など、そばの実を使った料理があります。

そばの実を使ったウクライナ、ロシア料理「カーシャ」。

そばの実を使ったウクライナ、ロシア料理「カーシャ」。

玄そば(黒っぽい殻をかぶった、収穫したままのそばの実)を塩ゆでして陰干しし、乾燥させて殻を落としたものを、徳島では”そば米”と呼びます。そば米雑炊(735円)は、菜っぱやねぎ、にんじん、大根などの野菜や豆腐を入れて普段食べたり、そば米を増やしたり鶏肉を加えてじゃこでだしを取ったお雑煮にし、お祝いやお正月など晴れの日の料理にしたそうです。日本では、そば粉を挽いた麺は多いけれど、そばの実を使った料理は珍しいと思います。

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祖谷にそばの栽培をもたらしたのは平家の落人たちだったという伝説があり、そば米雑炊のほかに、太めでつなぎがほとんど入らない「祖谷そば」も名物です。こちらは薄口のじゃこと醤油のだしで食べます。単なる伝説のような平家の落人村は全国各地にあるけれど、祖谷には平家屋敷や、平家のものと伝えられる赤旗(軍旗)などの遺物がちゃんと残っており、信憑性も高いといわれているとか。何よりも、かずら橋あたりの秘境っぷりを見ると、本物かもと納得してしまうはずです(笑)。

眞野さんは、そば米雑炊や祖谷そばをはじめとする郷土料理で町おこしをしたいとおっしゃっていましたが、健康食としても注目されている祖谷のそば料理を味わいつつ、平家落人の里を訪ねてみると、歴史への神秘的な興味も倍増するはずですよ。

お店では、シーズン中には山の幸である猪鍋なども提供しています。ちなみに店名でもある「うだつ(梲)」は、「うだつが上がらない」の語源で、棟上げをする意の大工言葉から転じて「生活や地位がパッとしない」の意味になったそう。ひとつ勉強になりました(笑)。