信州そば|長野県

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おいしい水が育んだ、日本のそばのルーツ

日本を訪れる外国人観光客を対象にしたサイトDeepJapanによると、2013年に当サイトで検索された日本観光の人気キーワード第1位は、「スシ」や「ラーメン」を差しおいて、意外にも「ソバ」だったそうです。

スシやラーメンは、あまりにも世界的に有名になりすぎて、実物を見てもあまり驚かないけれど、日本式のそば(そば切り)の食べ方は、海外でまださほどメジャーではないし、「わび・さび」を具現化したような(?)、そばの地味な色合いとシンプルな食べ方は、外国人にはエキゾチックに映るのかもしれない、などと想像してしまいました。中華そばなど他の麺類と区別するために、”日本そば”と称することもあるくらいですから。

さて、大陸から伝わり、縄文時代に遡るほど古い栽培の歴史があるともいう、そば。岩手や出雲、越前(福井)など日本各地にそばの特産地がありますが、もっとも有名なのは、そばの栽培に適した冷涼な高地を広く有する、長野県の信州そばでしょう。

信州そばの発祥地として名乗りを上げている長野県伊那市の「行者そば」には、奈良時代の初めに、修業のため信州に入った修験道の開祖・役小角が、村人たちからの温かいもてなしへの感謝の気持ちとして、そばの実を置いていき、村人たちがこのそばを大切に育てて信州全体に広めたという伝説が残っています。行者そばは、大根おろしの汁に焼みそを入れた”からつゆ”で食べるのが特徴です。

また、そば切りの最古の記録が残っているのも長野。安土桃山時代の天正2年(1574年)に、木曽にある定勝寺の「番匠作事日記」には、落成祝いにそば切りを振る舞った、という記録が記されているそうです。そんなことからも信州そばは、日本各地のそばのルーツだといわれ、江戸時代には「更科」のように、信州出身者がそばの店を江戸の町に開いて、大評判を呼びました。そんな経緯から、東京を中心にした関東地方では、現在に至るまで長らく、うどんよりそばの方がポピュラーでした。

東京にもそばの名店は数多くありますが、そばのおいしさは、粉の品質や製麺技術もさることながら、水質に大きく左右されます。そんな意味でも、おいしい水の宝庫である長野に行って食べる本場・信州そばの味は、やはり格別!

というわけで、今回は、年越しそばの季節である12月末を狙って、江戸時代に遡る歴史を持つという、長野県松本近郊の山麓にある山形村の「唐沢そば集落」を訪ねてみました。

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京都の清水寺にも縁があるといわれるその名も清水寺があり、山からのおいしい水をたたえた唐沢川が流れる山形村には、かつて水車屋が数件あり、昔からそばのおいしさが広く評判になっていたとか。現在も1本の道なりに、田舎の民家を改造したような素朴なそば屋10軒が立ち並び、地元産の粉と手打ちにこだわった美味なるそばを求めて、遠方からも車でお客さんが集まってきています。

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それぞれのお店が、独自の特色あるそばを提供していて、できればいろいろなお店を訪ねたかったのですが、限られた時間ではそうもいかず。そこで選んだのは、そば打ち歴30年のご主人による「そば処 からさわ亭」さんと、石碾きそばの「水舎」さん。せめて、2軒のはしごです。

前者は2段盛りの二八そば(上写真)、後者ではそば粉100%の十割そば(トップ写真)をいただきました。どちらも1人前1000円と値段はちょっとお高めですが、昔ながらの手打ちによる、みずみずしくて風味豊かな地粉のそばは、東京で食べるものとはひと味も、ふた味も違います。そして、いかにも山里のおばあちゃんの家のような、畳敷きの広間の雰囲気が何ともくつろげて、そばもいっそうおいしく感じました。

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青空に映える美しい雪山と、キーンと身の引き締まるような冷たい空気…。道祖神が点在する静かな田舎道のそば屋街をてくてく歩くのも、いかにも信州らしくて、旅情をかき立てられました。気候は寒いですが、行くなら、新そばの出回る秋以降から冬が、絶対におすすめです。

唐沢そば集落へは、松本駅から発着している松本電鉄の「波田」駅から徒歩45分(本数は少ないですがコミュニティバスもあり、またタクシーもあります)。今回は帰途の片道だけ歩いてみました。45分もよく知らないところを大丈夫かなあとも少し心配しましたが、ほぼ平坦でまっすぐかつ安全な道のりであり、とにかく周囲の山がきれいなので、ハイキング感覚で意外と楽しく歩けました。

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山形村まで行く時間のない方は、松本市内にもおいしいおそば屋さんがたくさんあります。地元の方に教えていただいたおすすめ店のひとつは、「みよ田」さん(上写真)。信州木曽の木祖村の地粉を使った手打ちそばが、手ごろな価格で食べられます。何よりも国宝でもある美しい松本城は必見ですし、松本をただ通り過ぎるのは、あまりにもったいなさすぎます。

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