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のっぺい汁|新潟県

のっぺい汁

田中角栄のもっとも好物だった料理

のっぺい汁(「野平」「能平」または「濃餅」汁)は、野菜やきのこ、たけのこ、鶏肉、さといもなどを煮込み、とろみをつけた素朴な田舎汁。「イ」と「エ」をあいまいに発音する越後訛りの特色から、新潟では”のっぺ汁”ともいいます。

島根県の津和野がルーツともいわれ、日本全国に分布している食べ物ですが、現在では主に越後(新潟県)の郷土料理と認知されることが多いよう。事実、2007年発表の農水省の郷土料理百選でも、新潟の食べ物として選ばれています。

のっぺい汁はなぜ新潟の食べ物だとされるようになったのか?それはどうやら、新潟といえばまず浮かぶこの人物、田中角栄氏に関係しているらしい。のっぺい汁は角栄氏がもっとも好物にしていた食べ物であり、「都市と地方の格差解消」を提唱した著書『日本列島改造論』(1972年)を具現化したような上越新幹線での東京-新潟の人・モノの往来の中で広く知られるようになった、という理由があるようなのです。

1993年に角栄氏が亡くなって、今年でもう20年。氏の生まれ故郷である新潟県柏崎市の西山地区にある「田中角榮記念館」に隣接した食堂「角さんの台所」では、今も訪れる人に、氏を偲ぶのっぺい汁を提供しています。というわけで、現地に食べに行ってみることにしました。

JR上越新幹線の長岡駅からバスに乗りつぎ30分ほど。おりしも豊穣の秋。キンモクセイが香り、稲穂が黄金色に実るのどかな農村に降り立って小路を歩き出すと、周囲から場違いなほど立派な鉄筋コンクリートの建物が見えてきます。

道の途中には「田中直紀・眞紀子」の表札を掲げた豪邸(ご実家だそうです)。そして建物の隣には、これまた日本の田園には場違いな、立派な中国庭園や孫悟空の登場人物の像、そしてこのご時世に日本と中国の国旗…。むむむ、なぜこんなところに? 少し時間がかかりましたが、理解できました。「そうか、角栄氏は日中国交正常化の立役者だったんだ」。

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とまあ、それはさておき、まずは「角さんの台所」で、ご近所の農家のお母さんとおぼしき方が作る、のっぺい汁定食をいただくことに。越後ののっぺい汁の特徴として、他地域では片栗粉や葛粉を使うところを、さといもでとろみをつけるという説もありますが、農文協のシリーズ書中の『聞き書 新潟の食事』では、作り方に「水で溶いた片栗粉でとろみをつける」と書いてあり、「角さんの台所」ののっぺい汁にも、片栗粉がとろみとして使われておりました。

薄味で、具だくさん。おそらく家庭で作るときはもっと見た目が地味だと思うのですが、お店ではかまぼこなどをちりばめ、色鮮やかにしてありました。付け合せは、地元・西山産のコシヒカリを使ったおにぎりです。

新潟ではお正月にのっぺい汁を大なべいっぱいに作って、三が日温め直しながら食べる習慣があるそう。新潟の人は女性も男性も働き者だといいますが、具だくさんののっぺい汁とおいしいごはんは、そんな労働に励む新潟人の体を支える健康食のように思えました。

「角さんの台所」の一角にあるお土産コーナーには、この西山産コシヒカリや、ここでしか買えないという、その名も「田中角栄」という名の日本酒を見かけました。「田中角榮記念館」では、あのアクの強いダミ声の演説が流れるテープや、故人ゆかりの遺品、著書、新聞のスクラップなどの膨大な資料が展示され、まさに新潟の英雄の”聖地”を訪れた気分になります。

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「昭和天皇に次ぐ昭和を代表する人物」ともいわれた角栄氏については、あのダミ声とコワモテから、金と権力をかざした強引な人物だというイメージを持っていました。しかし実際は、目下の人間にも分け隔てなく接する気配りの人であり、政敵からも一目置かれた愛すべき人物だったといいます。後年の汚職事件のことはさておき、記念館を訪れて知った、学歴もない貧しい農家の出でありながら、さまざまな努力と苦労を重ねて首相の座に登りつめた立志伝には、素直に感動しました。

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豪華な料亭の懐石料理でもお好みだったかと思いきや、往年のインタビュー・ビデオの中で、のっぺい汁をすすりながら「子供のころに食べたものが最高だ」と語っていた角栄氏…。

そういえば先日観た、ミッテラン大統領の専属料理人に抜擢された実在の女性シェフを描く「大統領の料理人」という映画でも、大統領は故郷の郷土料理が食べたくてこの女性を選んだエピソードが綴られていましたっけ。

一国の頂点に立った者のみなぎるパワーを支えるのは、三つ星シェフのコース料理ではなく、世の東西を問わず、実は故郷のおふくろの味だったのかもしれませんね。

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