まめぶ汁|岩手県・久慈

まめぶ汁

ドラマ「あまちゃん」でブレイクした久慈の郷土料理

東日本大震災の時に炊き出しとして知られるようになり、さらに2013年のNHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」に登場してブレイクした「まめぶ汁」。全国のご当地グルメを競う2013年の「B-1グランプリ」では全国5位に選ばれ、今や、都内をはじめ他県で行われる岩手フェアでも目玉商品になるほど、知名度がアップしました。

もともとは岩手県の久慈市山形町(かつての山形村)や九戸郡洋野町(かつての大野村)といった、ごく限られた地域の郷土料理であり、久慈市民の中には最近までまめぶ汁を知らなかった人も多いとか。

しかし「あまちゃん」が火をつけたブームで、今では、久慈駅前にある「まめぶの家」というまめぶ汁の専門店も注目されるように。ならば、久慈にまめぶ汁を食べに行こう!と思い立ち、行ってきました。くしくも9月下旬、「あまちゃん」最終回の日でした。

久慈~宮古間を走っていた三陸鉄道・の北リアス線はまだ全線が復旧しておらず(不通区間を代行バスが運行していますが時間がかかります)、今回はしかたなく遠回りして、八戸からJR八戸線で久慈へ。それでも車窓から見える三陸海岸の美しい景色には変わりなく、うららかで心地よい初秋の海風を受けながら、目的地のJR久慈駅に到着しました。

この日の三陸鉄道・久慈駅には「あまちゃん」のファンが全国から集い、お座敷列車も走るとのことで大にぎわい。三陸鉄道の駅員さんたちもとてもうれしそうでした。当日は「あまちゃん」最終回のパブリックビューイングも久慈で行われたとか…。まさに今や「あまちゃん」の町です。

さて、まめぶ汁とは、”まめぶ”というおだんごを浮かべた田舎汁。かつて南部藩の領だった時代に、年貢もままならないほど作物の育たない貧しい地域だった山形村や大野村で、麺やそばを食べてはいけないというお触れが出たために、代用食として作ったのが始まりだといわれています。

まめぶ汁は、小麦粉をぬるま湯でこねて、くるみと黒砂糖を入れて丸めたまめぶを、もどした干ししいたけやかんぴょう、にんじん、ごぼうなどの具を煮込んだ汁に入れ、まめぶがポコポコ浮かんできたところに片栗粉を加えてとろみをつけ、すまし(かつて東北にあった、みそを煮溶かして湯を濾した液体。現在はしょうゆを使用)で調味して作ります。まめぶを噛んだときに黒砂糖の甘さとくるみの歯ごたえが味わえ、日本の田舎風汁ものとしてはちょっと異色な感じがする料理でもあります。

甘いおもちが食事の汁の中に入っているところなどは、香川の「あんもち雑煮」を彷彿とさせますね。

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「あまちゃん」の出演者・スタッフたちも訪れたという「まめぶの家」では、単品や定食でまめぶ汁をいただくことができます。こちらではきのこや焼きどうふ、にんじんやかんぴょう、油揚げなどとともにまめぶが5個入っていて1杯500円。具だくさんかつ、素朴でやさしい味わいに、ホッとさせられます。肉類は入っていないので、ベジタリアンの方でも安心して食べられそうです。

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ちなみに「まめぶの家」は、ドラマが始まる以前の2011年のオープン。この店にヒントを得て脚本の宮藤官九郎さんが「あまちゃん」に取り入れたのではないかと思うほどです。ちなみに「まめぶの家」の経営者で 農林漁家民宿おかあさん100選にも選ばれている谷地ユワノさんは、もう30年以上もまめぶの普及に努めておられる方だとか…。

ご当地食が人々を町に引き寄せ、町を元気にしている姿や、誰にも知られずにいた郷土料理が、ひょんなきっかけで脚光を浴びるのを見るのは、他人事ながら気分がいいものです。特に、東日本大震災の被災地が食をきっかけに脚光を浴びる様子は、思わず応援したくなってしまいます。

何といっても、おらが故郷の料理は、郷土の自慢・誇りでもあるのですから!

そして、日本全国にはまだまだ、お宝のような郷土食が埋もれているかもしれないと思うと、発見する楽しみに何だかワクワクとしてくるのでした。

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