垂水漁港が発祥といわれる、神戸の春を告げる風物詩
兵庫県神戸市の垂水漁港が発祥といわれる「いかなごのくぎ煮」は、東日本で稚魚を”こうなご”と呼ぶ小魚のシンコ(当歳魚)を、しょうゆやみりん、砂糖、生姜などで煮込んだ佃煮の一種。煮上がったいかなごが曲がって、錆びたくぎに似ていることから、この名がつきました。
神戸では、毎年2月下旬にイカナゴ漁が解禁となり、3月上旬には垂水漁港でいかなご祭が開催されます。旬は短いですが、まさに、神戸の春を告げる風物詩のような食べ物です。いかなごのくぎ煮を煮るしょうゆのにおいが町中に香るという垂水のいかなご祭は、2014年は3月9日に開催されました。
そこで、旬のいかなごのくぎ煮を訪ねて、3月の垂水へ。JR垂水駅から海に向かって歩き、アウトレットショップの連なるマリンピア神戸に隣接する垂水漁港の直販所では、作りたてのいかなごのくぎ煮が店頭販売されていました。
釘煮は、いかなごだけのもの、くるみを和えたもの、ピリ辛味のものの3種類。「くぎ煮」の登録商標を持つという神戸・伍魚福さんをはじめ、兵庫県の瀬戸内海沿岸ではあちこちでいかなごの釘煮が売られていますが、発祥地である漁港の近くで作りたてを食べるのは、気分的にも格別(笑)。特に、くるみを和えたいかなごの釘煮がおいしく、個人的に大変気に入りました。
いかなごのくぎ煮は、関東ではほとんどなじみのない名前で、実は私自身も最近まで知らなかったのですが、先日、神戸で友人の集いに参加して聞いてみたところ、神戸を代表する伝統料理に、いかなごのくぎ煮は納得、という声を聞いてそのおなじみ度をはかり知ることができました。
昔は各家庭で作っていたそうですが、今ではお店で買うことも多いよう。地元のデパートの食料品売り場では大きなパック入りで売られていて、「こんなに食べるのかぁ」と、ちょっとびっくりしました。
シンプルに、温かいごはんに乗せて食べるのが一番おいしく食べられそうです。お酒のおつまみとしてもいけそう。しょうゆの味以上に甘さがきわだつ風味が、関西らしいといえるのかも。いっぺんにたくさんは食べられないけれど、この味に慣れてくると、食卓にないとさみしいと思わせるような、日本人の舌に訴える味わいでした。