へらへら団子|神奈川県・横須賀

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佐島漁港の氏神様への奉納品

ひとつの県から2~3品の料理がラインナップされている農水省の「農山漁村の郷土料理百選」。東京の深川丼や山梨のほうとうのように、誰でも納得の一品がほとんどなのだけれど、ときどき、その県に住む人でも知らない”謎の郷土料理”が混じっていて、何を基準に選んでいるんだかわからないことがあります。

神奈川県代表の2品、横須賀や座間の「へらへら団子」と津久井の「かんこ焼き」は、その最たるもの。特に前者は、横須賀生まれの人でも知らなかった人が多いらしい。なぜなぜ、それに”へらへら”って何?と好奇心がわきたち、まずは横須賀へ調査に行ってきました。

農水省の冊子によると、へらへら団子は、小麦粉と白玉粉(薄力粉と卵の地域もある)を混ぜ、水を加えて練り上げただんごをちぎって熱湯でゆでたもので、これを餡などを絡ませたもの。押しつぶしてへらへら(ぺらぺら?)した形からこの名前がついたそう。「横須賀市佐島では、江戸時代から伝わる船祭り(毎年7月)に際し、”佐島御舟歌”、”真鯛”とともに奉納される伝統料理で、船祭りの時だけ作られ、豊漁・無病息災を祈願し各家庭の神棚に供えるとともに親族等が味を楽しみます」とのことで、場所も判明。座間では単に農家のおやつだそうです。というわけで、まずは逗子駅から「佐島マリーナ」行きのバスに乗って佐島漁港へ…。

横須賀というと、軍港とか、米海軍基地のあるバタ臭い町というイメージがあったのですが、葉山に連なる反対の相模湾側の横須賀は、まったく違った風景。モダンなヨットハーバーや海水浴場、そしてトンネルをくぐってひと山越えると、またガラっと雰囲気が変わって、いい感じにひなびた漁港が残っていたりします。佐島も、名物の佐島しらすや佐島の真ダコを売る商店とともに月1回の朝市が開かれていたりする、そんな昔ながらの漁港のひとつでした。この他地域から隠されたような地形なら、確かに昔の伝統が残りやすいだろうなぁ。

地元の図書館にあった資料『横須賀市百年』によると、船祭りはかつては浦賀など他の港でも行われていたけれど、残念ながら現在は佐島だけになってしまい、しかも年1回行われていたものが、3年に1回になるなど縮小傾向にあるとのことです。

2013年はちょうどその3年に1度の年だったとのことで、もっと早く気づけばと残念でした。ただ、現地に7月から貼られたままのポスターが残っていて(笑)、何となく様子がわかりました。佐島地区の小高い丘に近年できたリゾート風の高級住宅地「湘南佐島なぎさの丘」の子供たちを含めた住民もお祭りに参加して、大いに賑わったそうです。また、へらへら団子などを奉納する「熊野社 八雲大神」(もともとの熊野社に、他所にあった八雲大神を合祀したらしい)が町内にあり、佐島の氏神様として大切にされているようでした。

というわけで、今まで無名だったへらへら団子が郷土料理百選に選ばれた理由は、食べ物そのものの独自性や知名度よりも、限られた地域で昔からの伝統が受け継がれているという、一種の希少性が買われたのではないかと思ったのでした。

さて、このへらへら団子、いったいどこで買えるのでしょう?実は横須賀市の指定銘菓にはなっても、船祭りの時しか食べない佐島地区はもちろん、横須賀駅の売店でおみやげとして売られているのを見かけません。賞味期限がその日限りと非常に短く、横須賀海軍カレーのようにメジャーでもないという理由もあるのでしょう。

現状では、市内の限られたお菓子屋さんに前日までに予約しなけらばならないと、ゲットするにはなかなかハードルが高いのです。かといって、へらへら団子の作り方自体は素朴そのものなので、家庭で作って食べて終わりではあまり意味がありません。

ここはぜひ佐島港を訪ねて、熊野社をお参りしたり、近隣の食事処で佐島でとれたお魚料理を食べてから、おみやげに持ち帰りたいもの。月1回の朝市の日を狙って行くと、にぎやかで楽しそうです。へらへら団子を手に入れるおすすめの方法は、佐島入口にある「和洋菓子 大そね」さんの支店(または本店。本店は佐島入口からバスで5分ほどの”一騎塚”停留所近くにあります)に前日までに電話で予約して買いに行くことです。1箱たっぷり入って350円と良心価格で、1箱から予約を受け付けてくださいます。店名をネット検索すると、お店の情報が出てくると思いますよ。

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