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ふなずし|滋賀県・大津

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寿司の原型「熟れずし」の一種

「鮒ずしや 彦根の城に 雲かかる」 与謝蕪村

江戸時代の俳人、蕪村は、近江の国を訪れた際、琵琶湖のほとりの茶屋で名物のふなずしを味わいながら、晴れた夏空に浮かぶ雲が彦根城の上にかかっている情景を、こんな句にして詠みました。

かつての近江の国の領土は、そのまま完全に現在の滋賀県です。その中心に位置し、面積のおよそ6分の1を占める、日本一大きな湖である琵琶湖は、ふなずしを含めて、今も昔も滋賀の食文化に多大な影響を与えてきました。滋賀の人は、自分たちの県のことを愛着をこめてしばしば「湖国」と呼んでいます。

さて、人によって好きと嫌いがはっきり分かれるという、ふなずし(あの発酵食品特有の味が、ですね。よくわかります(笑)。蕪村さんも食べたのかぁ、と思いつつ、その起源は江戸よりもはるか昔で、一説によると、今から1400~1500年前の弥生時代(奈良時代という説も)。中国から水田稲作農業の伝来とともに、ふなずしを作るための魚を塩と米飯で乳酸発酵させた「熟れずし(なれずし)」の製法が伝わったといいます。なお、熟れずしは、現在の日本のお寿司の原型であるという説が有力です。

また、発酵食品の起源は中国の雲南省やミャンマー、タイ北部あたりといわれていますから、ここで世界とつながったことがわかり、おお、これは一度、滋賀に行かねば!とばかり、さっそく旅の準備をはじめました。

ヨーグルトよりも体にいい?ふなずし乳酸菌

まず訪ねたのは、京都からも行きやすい、滋賀県の県庁所在地・大津。その地にある、江戸時代膳所藩お抱えの御用料亭を前身に持ち、ふなずしを得意にしていたという、明治2年創業の元祖・阪本屋さんを訪問。いかにも老舗らしい店舗には、歴代の宮内省御用品や博覧会の名誉大賞、農林大臣賞などの賞状や金牌、銀牌がズラリと飾られていて、お店の歴史の重みを感じます。

商品のふなずしの方も、体長30cm程のまるごと一匹分の高価なものから、お試しサイズの手ごろな小パックまで、いろいろ。ちょうどご主人がいらしたので、ふなずしについてお話をうかがってみました。

琵琶湖は日本一大きな湖であるだけでなく、400万年ほどの歴史を持つ、世界でも有数の古代湖でもあります。魚類など50種以上の琵琶湖固有の種が生息しており、ふなずしも、ニゴロブナという、琵琶湖特有の品種を使わないとおいしくないといわれているとか。阪本屋さんのふなずしは、琵琶湖産のニゴロブナと、滋賀産の江州米を使った逸品。そして、思ったほど匂いません。

というのも、お店には江戸の御用料亭時代からの秘伝レシピがあり、手間ひまをかけて上質な発酵をさせたためだそうで、あとで自宅に帰って、お茶漬け仕立てにして食べてみたのですが(上写真)、発酵食品独特のコク味が腸を活性化させるような、というか、いかにも体にいい感じで、しかも意外とおいしくいただくことができました。

そもそも、wikipediaによると、韓国のホンオフェ(発酵させたエイ)や、スウェーデンのシュールストレミング、新島の焼きたてのくさやなどに比べると、ふなずしの匂いははるかにおだやかなもののようで、やはり発酵の方法次第なのかな、などと思ってしまいます。

そういえば、阪本屋のご主人は、製薬会社の人がよく店に訪れるなんておっしゃっていました。何でも、実は「ふなずし乳酸菌 SU-6」というものが発見され、フナの持つビタミンやミネラルが損なわれずに、腸に届く善玉菌がほぼ100パーセントと、ヨーグルトよりも効果的なことがわかり、サプリメントなども開発されているのだそう。すごいな、ふなずし!

大津には観光地化されていない分、新鮮な発見の楽しみが

地元では、ふなずしは臭くて苦手と先入観を持つ人に向けて、ふなずしパイとか、ふなずしクッキーといった商品も売られていました。まさに、地元の名産を拡販するための努力ですね。

そんな中で、私がこれは!と思ったのは、同じ大津の「瀬田しじみ」の記事で紹介している「うおい」の女将、井上麗子さんが、ふなずしをもっと気軽に食べてほしいと考案したふなっぺぇという、ふなずしのペースト(ラベルの題字は、あの片岡鶴太郎さんが書いているそうです)。風味がよく、パスタに使ってもよし、料理のかくし味に加えてもよしで、まさに、日本のアンチョビ・ペーストです。

大津は、京都市に隣接していて、電車1本で気軽に行けるにもかからわず、正直、京都よりぐっと地味なためか、京都を訪れた観光客がなかなか足を向けないエリア。ふなずしも、その匂いの先入観ゆえなのか、残念なことに老舗が閉店したりと、伝統存続の危機もいわれているそうです。

しかしながら、琵琶湖のながめはすばらしいですし、大津ではその恵みの幸を味わう楽しみがあります。そして、観光地化されていない部分が残っているからこそ、ピンポイントで昔ながらの素朴な伝統に出会える魅力も。食を含めて新鮮な発見を楽しみにされている方には、おすすめの旅先です。

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