ラジャスタン料理

ラジャスタン

乾燥地帯らしい食材を使った料理

インド北西部にあるラジャスタン州は、(raja+sthan=王の国)の名の通り、ラージプートと呼ばれるヒンドゥー教徒の王侯戦士で有名な地。インドでもっとも大きい面積を持つ州で、州都は、ピンクシティという別称で知られる世界遺産の城壁都市があるジャイプールです。


↑ラジャスタンの菜食ターリ

ラジャスタン州の南西部を除く大部分は乾燥地帯にあり、料理にもそんな地域性が現れています。たとえば、日持ちがして、加熱しなくても食べられるパンなどの固形物が好まれること。また新鮮な野菜や水が貴重なことから、豆、穀物(雑穀)、ドライフルーツなど乾燥できる食材とヨーグルトがよく使われることです。ひとことでいえば、堅実で実用的な料理。それぞれの趣向で、完全な菜食主義者もいれば、宴の時だけ肉食する者もいます。

ラジャスタンのターリには、ケル・サングリ(ラジャスタン特産のいんげん豆のような野菜サングリと、砂漠に生えるベリー系の実カイアのスパイス煮込み)、じゃがいもと乾燥レンズ豆のカレー、アルー・マンゴディ、固い丸パンのバーティなどの名物料理が、たっぷり提供されます。

ラジャスタン州の北西部には、砂漠の遊牧民で一説にはヨーロッパのジプシー(ロマ)のルーツともいわれるバンジャラ族が暮らしています。彼らは表向きはヒンドゥー教徒ですが、実態はアミニズム信仰に近く、女性の美しい刺繍や飾りが有名。バンジャラ族の間ではとうもろこしや小麦粉、雑穀、豆などを使う料理が特徴的です。代表的なものは豆粉と小麦粉を混ぜた固パンのダル・バティ・チュルマやヨーグルトのお団子状にしたカルヒなどで、肉に禁忌はありません。

また、ラジャスタン州西部は、インド各地に進出して商売を営むエスニックグループ(もとはラージプートの一族)、マルワリ(日本でいうなら近江商人みたいなものでしょうか)の故郷。かつては自らの王国(マルワリ王国。首都はジョドプール)をこの地に持っていました。彼らは厳格な菜食主義で、商人らしく質素で安価な食事が基本。乳製品はタブーではなく、「マルワリ・ボンジナラヤ」と呼ばれるマルワリの人々が経営する純菜食のレストランがインド各地にあります。

筆者
青木 ゆり子

e-food.jp代表、郷土料理研究家、コラムニスト、内閣官房「東京2020ホストタウン事業」食文化アドバイザー、NHKラジオ番組「ちきゅうラジオ」料理ナビゲーター、全日本司厨士協会会員・調理師、女子栄養大学認定・食生活指導士。

主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)、「しらべよう!世界の料理」全7巻(図書館選定図書・ポプラ社 2017)

e-food.jpをフォローする
ご注意

※この記事・写真等はe-food.jpが著作権を所有し、利用者の方が世界の料理に関する学習をする際、お役に立てるように公開しているものです。無許可での転用・転載はしないでください。記事の原稿、写真は販売しております。
★→詳細 利用規約

※本文是e-food.jp的,拥有版权。未经允许,请勿让引水重印。

※上記の文章は適宜、更新を重ねていますが、誤りや、載せた方がいいと思われる事項などあればお知らせいただけると幸いです。→メールフォーム

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
インド地方料理
シェアする
e-food.jpをフォローする
世界料理マップ
Ads Blocker Image Powered by Code Help Pro

広告表示の許可のお願い

このサイトは広告の収益で取材費・制作費を賄って運営しています。 サイト内の広告を非表示にする拡張機能をオフにし、運営へのご協力をお願いいたします。 閉じるをクリックするとこの表示は消えます。
タイトルとURLをコピーしました