レバノンのワイン


日本で手に入る中東のワイン。前回はトルコ共和国のワインをご紹介しましたが、アラブ圏ワインの中で最も有名な生産国といえばやはりレバノン共和国です。国土は小さいですがフランス統治時代の影響と多様な気候風土、多くの宗教的基盤を持つグループがひしめきあうこの国のワインは、洗練されたレバノン料理がアラブ料理の代表格のように扱われることもあって多くの国のアラブ人街のレストランにおいても飲むことができます。

実は私もレバノン・ワインを初めて飲んだのは、まだ日本にアラブ料理のレストランがあまりなかった頃の英国ロンドンのレバノン料理店でした。ただレバノン料理やレバノン・ワインが世界中に広まった一因には暫く続いた内戦により海外へ出てゆくレバノン人が多かったこともあるので、少し複雑な気持ちではあります。

レバノン・ワインというとワイン好きの方なら2~3のワイナリー名は出てくるかもしれません。シャトー・クサラやシャトー・ケフラヤ、クロ・サントマ等の名前と共にッカー高原がその生産地としてエチケットに刻まれています。

ベッカー高原とは東側のシリアと接するアンチレバノン山脈(アラビア語名:エシシャルキ山脈)とレバノン山脈の間に広がる高地で、アンチレバノン山脈の最南部にあるヘルモン山(アラビア語名:シャイク山)で接するシリアとイスラエルの境界にあるゴラン高原(アラビア語名:ジャウラーン高原、現在はイスラエルが実行支配)とともに古くからワインの生産の歴史があった地域ですが、イスラム帝国下の時代は暫くワインの生産は途絶えており、オスマン帝国の時代にミレット制という小数派の自治権を保護する制度のもとで1857年にイエズス会の修道士がアルジェリアからサンソー種のぶどうを持ちこんでからレバノン・ワインの生産は復活したのです。

そのワイナリーこそ有名なシャトー・クサラであり、現代に続くレバノン・ワインはここから始まったといってよいでしょう。当初はフランス人等の入植者によりDomaine des TourellesやCha^teau Musarのようなワイナリーが作られていったのですが、現在のベッカー高原では主にマロン派や正教会キリスト教徒によってワイナリーの運営は行われています。

そういった経緯からぶどうの品種もフランス等から持ち込んだ品種が数多くあり、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、サンソー、グルナッシュ、カリニャン等が栽培され、その結果世界各国で受入れられるワインとなっています。しかしワイン生産の歴史の古いこの土地ではシャルドネの原種と言われるObaideh種やセミヨンの原種といわれるMerwah種等の固有品種もあり、レバノンらしさを味わうこともできるのです。

それでは以下に代表的なレバノンのワイナリーと銘柄を見てゆきましょう。最近は多くの銘柄が日本でも飲めるようになっていますので是非探してみて下さい。

【ベッカー県ザーレ地区】
・Chateau Ksara(シャトー・クサラ)
  上述の老舗ワイナリーでレバノンの全生産量の70%を生産していると言われています。 現在はイエズス会との関係はなく、現地を訪れるとワイナリーの見学も可能です。

・Chateau Kefraya(シャトー・ケフラヤ)
二番目に大きなワイナリーで、キリスト教徒ではなくドルーズ派イスラム教徒の所有です。

・Vin Heritage(ヴァン・ヘリテージ)

・他にChateau Nakad (シャトー・ナカッド)、Chateau Marsyas (シャトー・マーシャス)、 Clos St. Thomas (クロ・サン・トマ)等

【南レバノン県ジャズィン地区】
・Karam Winery and Chateau Belle-Vue(カラム・ワイナリー)
 詳細確認中

【山岳レバノン県ケセルワーン地区】
・Chateau Musar(シャトー・ミュザール)
ボルドータイプの赤が有名。固有品種のObeideh、Merwahを使った白は独特の味わいがあり、Hocharという銘柄は軽くて飲みやすい。

中東随一のワイン国だけあってまだまだ新しいワイン・ワイナリーが出てくると思いますしご案内できていないものも多くありますが、まだまだ中東のワインの先頭を走り発展していくものと思われます。地中海に面したアラブ圏はアラビア半島とは異なりヨーロッパとの関係は歴史的にも深く、レバノンやシリアだと欧風の顔立ちが多く見うけられます。歴史的なことはまた別の機会にするにしますが、今後も注目していくべきワイン市場かと思います。


※この記事は、e-food.jpのメールマガジン「世界料理通信」2008年11月-2010年4月に連載されたコラムを加筆・訂正・更新したものです。


このエントリーをはてなブックマークに追加
←BACK

カスタム検索

インフォメーション

RSS フェイスブック ツイッター
e-food.jpについて
お問合せ
コミュニティのご案内