フィリピンのワイン?


前回はメイド・イン香港のワインを紹介し「ワインの国籍とは何を基準にしているのか」という点で「ぶどう栽培地とワイン醸造場所」という問題をとりあげましたが、同様の例ではっきりとぶどう生産地の国名とメーカー名が記載されながら別の国のワインとしても認識されるワイン「ノヴェッリーノ」についてお話ししていきたいと思います。

このワインはイタリアのあるワインメーカーがぶどうを輸入しフィリピンで醸造して作りあげたワインなのですが、フィリピンで生産するにあたってフィリピン料理に合うように醸造したためにフィリピン人からフィリピン・ワインとしての認識を持って受け入れられたという変わった経歴を持っています。

NOVELLINO Italy Winesというこのワイン、そもそもフィリピンにおいては国産ぶどうによるワインの生産は教会関連の畑等が一部の高地などにあった程度で、大方のワインと呼ばれるものは果実酒や一部の蒸留酒につけられた名称でしかありませんでした。そもそもフィリピンの言語で酒を表す言葉「アラックAlak」は時に英語でWinesと総称される為、果実酒以外のものも加えられてしまいます。

北部マウンテン州で生産されるタプイTapoyという日本酒に似たライスワインや南部タガログ地方のランバノックLambanogというココナッツの蒸留酒、また全国で生産されているトゥバTubaという椰子酒、イロコス地方で生産されるバーシBasiというサトウキビを発酵させた酒、そしてその他のストロベリーやビグナイ(ワイルドブラックベリーの一種)等の果実からつくられた本来の果実酒を含めて「ポピュラーなフィリピン土着ワイン(Popular Native Wines in Philippines)」と呼んでいます。勿論この中ではストロベリー・ワインやビグナイ・ワイン等だけが果実酒という意味で本来ワインという名前で呼ぶにふさわしいものといえるでしょう。

最近ではフィリピンでもワインが好まれるようになり輸入ワイン等を扱うレストランも都市部やリゾート地では増えていますが、サン・ミゲルをはじめとするビール派が多数を占めるフィリピンにおいては他国のワインと並ぶ「フィリピン・ワイン」と認識されるに至るものは「ネイティブ・ワイン」としてはながらく生産されてきませんでした。

そのような中で「ノヴェッリーノ」というワインは誕生したのです。前述のようにこのワインはイタリアのBel Mondo Italia Corporation(BMIC)という会社が北イタリア各地の選りすぐったぶどうをフィリピンに送り、BMICが委託したMarket Reach Distributors,Inc.というケソン市にある会社で醸造しています。このワインはフィリピンで醸造されているワインの中で初めて各国のワインと肩を並べられるワインといえると思います。マニラ等都市部では高級なフィリピン料理店をはじめ、東南アジア料理店や西洋料理の店でも徐々に置かれるようになり、フィリピン人のためのワインとして普及しつつあります。

ただしフィリピン人の嗜好にあわせているため甘口に作られており、総ての種類が冷やして飲むことを勧めています。ちなみに主な銘柄は以下の通りです。

・Classico 甘口4.5% Rosso Classico(赤)/Bianco Classico(白)
・Tradizionale セミドライ9.5% Rosso Tradzionale(赤)
・Vivace 甘口7.5% Rosso Vivace(赤)/Bianco Vivace(白)
・Casual フルーツ・ブレンド・ワイン4.5%
 Casual Red Wine(赤):Wild Blackberry/Strawberry Passion
 Casual White Wine(白):Luscious Peach

またこのワインの面白いところは、世界に労働力として広がるフィリピン人社会とともにワインのシェアも拡大して、遂には同じ醸造方法のNOVELLINO WINEの醸造工場を米国・カリフォルニア州に持ち生産するに至ったのです。フィリピンで生産しているならまだしも、イタリア産のぶどう(と思われますが未確認)を米国で生産していながら、ピノイ達の間で「我々のフィリピン・ワイン」という認識で飲まれているとうのはなんとも不思議な事です。米国の工場に関しては詳細を掴んでいないので、是非調査し実際に現地で飲んでみたいと思います。

また、似たような例としてはフィジーで生産されたイタリア・ワイン(「ランブルスコ」だったとの情報:ただし未確認で現在は生産していない模様)を「フィジー・ワイン」としていたケースや、米国のアイルランド系移民が生産するワインを「アイリッシュ・ワイン」として彼ら共同体で認識を持っているというケースもあります。

最近のフィリピンのワイン産業は輸入・国産を含めていずれも成長の傾向にあり、先に述べたビグナイBignayという果実を使ったワインの他、ランブータンという甘いフルーツを改良して作った「ゴエナ・ランブータン5 Goyena Rambutan 5」という白ワインもあり、このワインは一昨年の世界新種ワイン品評会で1位を取るなど奥行きをみせています。

「フィリピンなんてワインとは無縁の国」などと思わずに、遊びに行く機会があればぜひフィリピンのワインを味わってみて下さい。但し、気をつけないとランバノックのような蒸留酒にも「Wines」の表示がある時もありますのでお気をつけて下さい。


※この記事は、e-food.jpのメールマガジン「世界料理通信」2008年11月-2010年4月に連載されたコラムを加筆・訂正・更新したものです。


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