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ミラノ万博リポート3 【世界の料理の数々】


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万博会場で世界の珍しい国・地域の料理を

日本館を訪れることと並んで、万博の楽しみの真髄といえば、世界各国のパビリオンめぐり。

特に今回のミラノ万博は「食」がテーマなので、多くの国のパビリオンが自国の食に関する展示や、その国の料理やお酒を楽しめるレストラン、バー、食品ショップ等を併設していて、私などにとってはたまらなく魅力的でした。

で、悩まされたのが、「どこを優先して、何を食べよう?」という問題…。140ヶ国以上の国別のほか、イタリアの州、企業・団体、「未来の食料」などのテーマ館など膨大な数のパビリオンがあるため、限られた時間ですべては見切れないだろうし、体力も続かないのは、火を見るより明らかでした。

「食と文化」に目的を絞ってパビリオンをめぐる

ミラノ万博のテーマは「料理」ではなく、あくまでも「食」。そのため、飢餓や食料問題から、灌漑などの農業技術まで、扱われるジャンルが非常に広範囲です。自分なりの目的を絞って優先順位を決めないと、ワケがわからず消化不良のまま帰国の日が来てしまう心配がありました。

それに、パビリオンは自由見学とは限らず、日本館のようにあらかじめ決められたプログラムに沿って館内を移動するスタイルのため、たとえつまらなくても途中で抜けられずに時間を無駄に取られる可能性も…。

そこで、7つあるミラノ万博のサブテーマの中から、目的を「食と文化」の一本やりに定めて、それ以外は例外を除いて、たとえ人気館でもパスすることに。その代わり、並ばずとも入れる各国レストランやショップはすべてひと通り見て回ることに決めました。

万博会場で食べた世界の料理の数々

次はもっと重要な、何を食べるか?です(笑)。

胃袋の容量が無限大にあるわけではないし、大規模な世界イベントだけに、ユーロ高に加えて、食事の値段も決して安くない…。ということで、悩ましい問題でしたが、ここでも割り切って、おいしそうな見た目に惑わされず、「万博会場以外ではなかなか食べられそうにない料理、ミラノで食べることに価値がある料理」を先に目星をつけて、優先することに。

そうなると、日本館のレストランは、別にイタリアで食べなくてもいいので見送りとなり、タイやバングラデシュなど、たとえ見た目がおいしそうでも日本で食べられるアジア系の料理は同様にパス。そうして除外していくと、「日本でなかなか食べられない珍しい国や地域の料理」に絞られていきます。

以下が、私の選んだ希少と思われる料理の数々です。

まずは、中東オマーン館の料理。郷土料理のマクブース(トップ写真)とともに、前菜やサラダなどが付くコースメニューが37ユーロでした。

国家元首のカブース国王に料理を提供しておられたインド人シェフのお店は以前東京にありましたが、本格的なオマーン本国の郷土料理はなかかな食べられません。

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↑オマーン館のレストラン。中東っぽさが随所に光る。

次は西アフリカの国ガンビア館の料理。ガンビアは日本での知名度は低いし、大使館、駐日外国公館すらありませんが、アフリカの中では比較的、治安も安定していて、ヨーロッパでは英語も通じる観光地として人気の国です。

ガンビアでは、国の周りを囲む隣国セネガルなどと同様に魚やごはんもよく食べるそうで、スタッフの女性に「私の国でもごはんを一緒に魚を食べるんです」といったら、「スシでしょ?私も大好きよ」と。

そんな魚×米にまつわる国際交流も楽しかったし、スシのワールドワイド化は私たち日本人の想像以上に広まっているのを知り、とてもうれしく思いました。

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↑ごはんに魚とトマトベースのシチューをかけていただく、ベネチンという典型的なガンビアの食事。小盛りを用意してくださっていたのがありがたい。おいしくいただき、5ユーロ。

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↑ガンビア館のスタッフの方々と記念撮影。

レストランのはしごはボリューム的に厳しいので、気軽に食べられるスナックの食べ歩きもしました。

モナコ館では、カジノで食べられる、小さな国の数少ない国民食のひとつバルバジュアンを見つけて、早速トライ。アミガサダケなどいろいろな具がありますが、こちらではチーズとほうれん草でした。揚げたてフワフワなペストリーもおいしかったです。

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↑モナコのスナック、バルバジュアン。10ユーロ。

スロベニア館では、ル・ポティカという、かわいいお菓子を発見。スロベニア人が愛してやまないお菓子ポティカのミニチュア版です。スロベニア産ネクターと一緒にいただきました。

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↑スロベニアのポティカのミニチュア版。3.5ユーロ。

他にも、アンゴラ、モルドヴァ、リトアニア、ウルグアイ、そしてカザフスタンなどなど、日本ではなかなか食べられない国のレストランがパビリオンに併設されていました。各自のお好みで選んでみるといいと思います。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙が選ぶ、ミラノ万博のおすすめレストラン

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上記はあくまでも私の個人的な好みで食べに行ったレストランですが、6月5日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙には「食通のためのエキスポ・ミラノ万博の食事攻略ガイド」と題した、もっと客観的に選んだおすすめレストランが掲載されていましたので、ご紹介しましょう。

各国料理については、「80皿で世界一周」(もちろん”80日間世界一周”のパロディー(笑))の項が参考になるはず。

それによると、デンデ椰子入りのピーナツチキンなど、ポルトガルとアフリカをミックスした料理を提供しているアンゴラ、馬肉のタルタルステーキ(!)や炊き込みご飯のプロフを提供しているカザフスタン、パンパの草原で育った自国の牛肉をイタリアに輸送して、その場で焼くアサード(ステーキ)を提供しているウルグアイ、その他オランダイランチリのそれぞれのパビリオンのレストランがイチオシとのことです。

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↑今回の万博の人気No.3のパビリオンでもある、中央アジア・カザフスタン館のレストラン。カザフ製の絵皿を使って、珍しい馬肉のタルタルステーキやプロフなどの料理を提供。カザフ館に入るのは行列していても、裏の入り口でスタッフに言えばレストランの中に入れてくれる。

外さない、イタリア全州の郷土料理

さて、以上のような各国料理とともに見逃せないのが、英語のItalyとEatをかけたイータリー(Eataly)と称した、イタリア全土の州の郷土料理が南北に分かれて集まったゾーンです。「Italy is Eataly」なんて書かれたTシャツも売られていました。

ある意味、食事については、こちらのイータリーがミラノ万博のメインイベントといえるかも。前回の上海万博のときも、中国全省の郷土料理を集めたレストランが圧巻だったのを思い出しました。

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地元イタリア人のお客が多く来場する会場でごまかしはきかないし、美食の国イタリアの威信をかけて、決して味に外れはないはず…。そう考えて、イータリーのいくつかブースを巡りましたが、予想は裏切られませんでした(値段に比べてボリューム少なめなのがちょっと残念でしたが…)。

作り置きを温めて出しているところも多々ある他国パビリオンのレストランに対して、ここではその場で調理してくれるブースが少なくありません。

そこで、まずは万博の開催地ミラノに敬意を表して、ミラノを州都とするロンバルディア州の郷土料理を。万博会場ではIl Gabbianoというトラットリアがロンバルディア料理を提供。

こちらでは毎月テーマを変えているようで、6月はロンバルディア州の南東部にある街クレモナの名物料理の特集でした。マルビニという、パルミジャーノによく似たグラナ・パダーノ・チーズとクルミ入りのソースをかけた肉入りラビオリの料理や、ジウシというホロホロ鳥のロースト料理が振る舞われていました。

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↑ロンバルディア州の街クレモナの名物”マルビニ”。チーズとクルミのソースがおいしい!その場で作ってくれる。10ユーロ。

ミラノのマルペンサ国際空港から市内へと向かうと、晴れた日には車窓から美しいアルプス山脈を見渡すことができます。スイスと国境を接するロンバルディア州は、山の恵みである新鮮な乳製品がおいしい土地でもあるのです。

イータリー内では、その場で撹拌した作りたてのミルク・ジェラートが販売されていました。これがまたおいしく、汗ばむ陽気もあって、つい2度食べに行ってしまったほどです。

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↑Eataly内に出店していた、作りたてのミルク・ジェラートが食べられるLait。行列ができていた。おすすめ。

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また、イタリア全州の中でもシチリアやトスカーナの料理は日本でもおなじみですが、あまり知られていない長靴型のイタリア半島のふくらはぎあたりに位置する、アブルッツォ州やモリーゼ州、マルケ州などの料理にも思わず目が行ってしまいました。

まずは、アブルッツォ州の名物で、お店のスタッフも「ぜひこれは食べて」という、日本の焼き鳥に似た見かけの羊の串焼きアロスチーニを。中東料理のようにスパイスは使わず、味付けは塩か胡椒くらい。シンプルながらもジューシーで柔らかい羊肉がとてもおいしい料理でした。

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↑シェフもおすすめの、アブルッツォ州の名物アロスチーニ。10ユーロ。イタリアにも、こんな焼き鳥みたいな料理があるのかぁ。

イータリーでも、すべてのイタリアの州の郷土料理を食べられなかったのが、はなはだ残念。それでも、あちこちの州のブースを巡るだけで、イタリアの豊かな地方色を実感できて、イタリア料理への興味がいっそう広がりました。

珍しいワイン、ドリンクや嗜好品、食器類の販売も…

万博会場で食べる体験ができるのは、料理だけではありません。ワインなどのお酒をはじめ、コーヒー、チョコレートなどの飲料、嗜好品も豊富にトライできます。ただし、調子に乗って酔ってへべれけになるわけにもいかないので(笑)、優先したのはやはり珍しいものです。

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↑超レアな、アフリカ南部アンゴラのワイン。長らくポルトガルの影響を受けた国だけに、ワインの味もこなれたもの。

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↑リトアニア館の珍しいお酒の数々。その場で飲むことも可能。

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↑イエメン館では、同国の天下の宝刀?イエメンコーヒーのコーナーでデモンストレーションも。

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ポーランド館のドリンク。東欧らしいかわいらしさ。

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↑チョコレートで有名なガーナのカカオ・リキュール”Takai”。インパクトのある名前で覚えていたが、日本でのアフリカ・フェスティバル等でも見かけた一品。

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↑隣接した同じカカオ産地コーナーのコートジボワール館には、カカオのオバQが…(笑)。

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↑中央アジアの国ウズベキスタン館の料理展示。スタッフは愛・地球博で来日の経験がある方で、非常に親日的だった。

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↑同じく中央アジアのトルクメニスタン館のレストランでは、料理のほか、パンやフルーツなどを販売。貴重なレシピをコピーさせていただいた。

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↑料理の展示に熱心だったアンゴラ館。地域別に分けた、貴重なアンゴラ全土の郷土料理をレシピ付きで。

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↑カンボジア館のショップにて。美しい食器を思わず買いたくなったが、荷物になるので我慢、我慢。

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↑チュニジア館でも食器を販売。こちらも購買意欲をそそられる美しさ。

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↑モロッコ館は食材の販売に力を入れており、数々の種類のクスクスも売られていた。

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↑各国のパビリオンを巡りながら、暇にしているスタッフをつかまえては現地の料理の話を聞いた。みなさん熱心に教えてくださって、うれしかった。レシピや資料もできる限り収集。バルカン半島の国々などが貴重。

会場に植えられたさまざまな食用植物

さて、万博会場では、各国パビリオンの周辺に植えられたさまざまな食用植物も印象的でした。万博が始まる春に植栽して、終盤の10月に収穫、という目論みなのでしょうか。

ぶどうやアーティチョーク、数々のハーブなどのほか、雑穀のソルガムやヤム芋の木など、日本では珍しい植物を見られたのもラッキーでした。

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↑ぶどうの木。秋にぶどうを収穫してこれでエキスポ・ワインを造ったら最高だろうな…。

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↑アーティチョーク。こんなに大きいなんて驚き。

と、万博会場では目的を絞ってパビリオンをかけ巡り、料理を食べ歩くほか、レシピなどの資料をもらったり、記録用の写真を撮影したりしていましたが、スタッフたちと話しこんでいると、あっという間に時間がたってしまいました。

ミラノが日本からもっと近かったら、もう一度くらいぜひ再訪したいものです。

次は、ミラノ万博の数々のアトラクションや印象的なパビリオンについてお届けします。


→・ミラノ万博リポート4【会場のアトラクション】
 ・ミラノ万博リポート5【実用的な情報まとめ】
に続く

←・ミラノ万博リポート1【はじめに】
 ・ミラノ万博リポート2【日本館を訪ねて】
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profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作:「しらべよう!世界の料理」全7巻(ポプラ社 2017)


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