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キプロス・カコペトリア村のニジマス料理


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キプロス島の山中にある中世の村へ

アジアから地中海沿岸あたりの地域を中心にした、歴史ある街の知られざる郷土食に魅せられて、断続的に現地を訪ね歩いています。2015年6月にはキプロス共和国の山岳地方にあるカコペトリア村に、名物のニジマス料理を食べに行ってきました。

地中海沿岸といえば、オリーブ畑の広がる乾燥した土地を思い浮かべてしまうのですが、実は地域によって気候もさまざま。キプロス島は四国の半分ほどの面積しかない島ですが、中央部から西部にかけては標高2000mに近いオリンポス山を最高峰とするトロードス山脈が連なっており、夏には40度を超す過酷な暑さを記録する内陸部を尻目に、涼しく過ごせる避暑地として人気なのです。冬には雪も積もり、スキー場があるほどで、そのドラマチックなほどの違いには、ちょっとびっくりします。

カコペトリアは、首都ニコシアから55kmほどの、トロードス山脈の山間にある静かな宿場町。紀元前6-7世紀頃から人が住み始め、中世の頃に栄えた村で、ギリシャ語で”悪い石”を意味する村名の由来になった石が、今も村の街道沿いに残っています。そして中世の面影を残す街並みや緑豊かな森とともに、何よりも心なごむのが、街を流れる清流。村ではその水質のよさを利用して1969年にニジマスの養殖事業を開始し、今ではニジマス料理がリゾートホテルのレストランで供される名物料理として定着しています。

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カコペトリア村には、ニジマス料理を食べさせてくれるレストラン兼ホテルがいくつかあります。Linos Innというぶどう棚のあるお店が割と有名なようですが、今回は「ニジマス料理の調理法に手間をかけていて、レストランからの眺めがよい」という、キプロス・インフォメーションサービスの志村暁子さんおすすめのMylos Restaurantへ。後で調べたら、Tripadvisorの評価もこちらの方が高いようでした。まぁ、これは好みの問題ですが…。

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レストランはMill Hotelという13室を擁する宿泊施設を併設していて、泊まることが可能。清流に面したテラスは気持ちがよく、川のせせらぎや植物の生態系が何となく日本の山奥の温泉地に似ていて、ホッと落ち着く感じでした。

眺めのいいテラス席でニジマス料理を堪能

そしてお待ちかねのニジマス料理。このあたりではレストランによってはニジマスをただ焼いただけ、というところも多いそうなのですが、こちらではきちんとした調理で、たっぷりのバターで風味よくソテーした、ふっくらしてフレッシュなニジマスを出してくれます。また添え物のポテトもフライ、ボイルド、ベイクドなど調理法を選べるなどの心遣いがうれしい限りでした。

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ニジマス料理自体は伝統的なキプロス料理ではないのですが、キプロス特産のハルーミチーズの編み焼きや、新鮮な野菜やオリーブの実、フェタチーズがたっぷりのキプロスサラダ、そしてキプロス産ワインとともに食せば、旅情もさらにアップ。それに、空気も水質もいいカコペトリアでは、おいしいキプロス料理がさらにおいしく感じます。

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そして食後には、カコペトリアのもうひとつの名物である「グリコ」も堪能。おそらくGlycogen(糖原)の語源になったギリシャ語の甘味菓子で、果物や野菜のシロップ煮です。オーナー直々に、お店の歴史の説明とともにグリコをカットしてくださり、感激しました。

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今回はレストランの利用のみでしたが、時間に余裕があればぜひ宿泊したい場所。部屋を見せていただきましたが、モダンでありながら、旅籠の雰囲気を残した佇まいがすてきでした。

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キプロスといえば、ギリシャ系のキプロス共和国と、トルコ系で国連未承認の北キプロス共和国に分断された国家として知られ、治安は大丈夫なのだろうか、と心配する方もおられるかもしれません。私は今回12年ぶりの訪問だったのですが、以前は緊張感がピリピリと伝わってきた首都ニコシアのグリーンライン(分断線)の検問所が、今ではずっと気軽に往来できるようになっていたのに驚きました。南北の大統領の会談が行われたり、ギリシャ系とトルコ系住民の文化交流も盛んになりつつあるなど雪解けムードで、近い将来、南北統一が起こりうるのでは?という気配すら感じた次第です。

ギリシャ正教教徒のギリシャ系住民とイスラム教徒のトルコ系住民は、信仰の違いこそあれど、キプロス島ではもともと「キプロス人」として両者が平和的に共存しており、ハルーミチーズしかり伝統的な食品にも共通点がたくさんあります。豊富な史跡の観光とともに、キプロスのすばらしい伝統料理を日本からももっと気軽に食べに行けるようになることを願っています。

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Mylos Restaurant
Milos Street 8, Kakopetria,
Nicosia, Cyprus 2810
Tel: (+357) 22922536
Fax: (+357) 22813970


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profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

雑誌記者、企業のWEBディレクターを経て2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を創設。以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献を目指して活動。
プロフィール詳細
著作:「しらべよう!世界の料理」全7巻(ポプラ社 2017)

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