スズキの奉書焼き|島根県・松江

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不昧公好みの松江の郷土料理

松江について語るときに必ず登場する人物が、松江藩主だった不昧公こと松平治郷。江戸時代の代表的茶人のひとりとして知られ、文化の薫り高い現在の松江の町の性格を築いた人でもあります。松江では不昧公にまつわる話が多々伝えられていますが、この「スズキの奉書焼き」もそんな”不昧公好み”といわれる松江の郷土料理のひとつです。

こんな逸話が残っています。昔、漁師たちが焚き火の灰の中でスズキを焼いていたところに不昧公が通りかかり、所望されたところ、灰だらけでは恐れ多いと奉書紙に包んで献上したのがはじまりだと。スズキは稚魚から成魚になるまで魚の成長により名前が変わるめでたい”出世魚”であり、海水と真水とが混じり合う汽水湖である宍道湖でとれる名物を集めた宍道湖七珍のひとつでもあります。

焼いた奉書の香りがスズキに移ってほんのり香ばしい奉書焼きですが、庶民が口にできるようになったのは明治時代になってから。何でもあまりにもおいしいので、松江藩が特産品の高級魚として門外不出にしていたそうな。

さて、そんな宍道湖のスズキの旬は晩秋から初冬にかけて。11月中旬以降には、同じく七珍のひとつであるシラウオ漁が解禁になり、また旧暦のため時期は毎年少し変わりますが、神在月で出雲大社の神在祭が行われる時期にもほぼ重なります。つまり、松江を訪れるには、このころが絶好のシーズンなのです。

ちなみに、松江から近い鳥取県の境港でも、9月の紅ズワイガニに続いて、松葉ガニ漁が11月上旬頃から始まります。それを考慮して旅行のスケジュールを立てると、山陰の海の幸が二倍楽しめてしまいます(笑)。というわけで、今年も11月中旬の松江へレッツゴー!

訪れたのは、すでに常連となった松江の郷土料理店「川京」さんです。カウンター席だけのとても小さなお店ですが、愉快な名物マスターがいて、美しいおかみさんとお嬢さんが心づくしのおいしい料理を出してくれる、チェーン店に押されて今や希少になった昔ながらの家族経営のアットホームな雰囲気が居心地よく、何度も通っております。

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こちらのお店のいいところは、夜に女性ひとりでも気兼ねなく、いろいろな松江の郷土料理が堪能できること。スズキの奉書焼きも切り身をていねいに包んで1人前から出してくださいます。もみじおろしとしょうゆ、ぎゅっと絞ったさわやかなすだちをかけていただくスズキは、ホロホロっとした身が何ともおいしく、新鮮なため臭みもありません。

作る側としては手間ひまもかかると思うのですが、おひとりでもどうぞどうぞといわんばかりに歓迎してくださって、うれしい限り。肩寄せ合ってすわる全国から来られた見ず知らずの隣のお客さんとも自然と会話がはずみ、宍道湖の恵みをさらにおいしく、楽しくいただけ、旅の思い出も倍増します。

何と創業40年余り。今や松江でもトップクラスの人気店とのことで、神在月シーズンや週末などは早めに予約を入れないと満席になることが多いようです。ご注意くださいませ。

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