めはりずし|和歌山県・三重県・熊野地方

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熊野大社の玄関口で駅弁としても販売

毎年1月に新宿・京王百貨店で行われる駅弁の祭典「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」が好きで、毎年のように出かけているのですが、凝った新作駅弁を尻目にいつも思うのは、「駅弁は、昔ながらのシンプルな食材が一番おいしいなぁ」ということです。

たとえば、北海道・JR函館本線の森駅の”いかめし”や、広島・山陽本線の宮島口にある「うえの」の”あなごめし”、信越本線・横川駅の”峠の釜めし”などなど…。熊野大社の玄関口でもある紀勢本線・新宮駅の”めはりずし”もまた、そんな古典的な有名駅弁のひとつです。

めはりずし自体は、もともと、江戸時代から熊野地方で農作業や山仕事に行く際のお弁当として食べられていた、長い歴史のある熊野独特の食べ物。というわけで、和歌山県へ熊野詣でに出かけ、地元の仕出し弁当の会社「丸新」さんが新宮駅で販売する駅弁”熊野名産 めはり寿し”を買って、実際に列車の中で食べてみました(笑)。

「丸新」さんによると、

紀南地方の農家では、農作業に出かけるときなど、高菜(からし菜)の葉で握った”高菜寿し”を弁当にしますが、なにぶん忙しいので、2つ3つでお腹がいっぱになるように大きく握ります。このため、食べる時に大きく口を開け、目まで見張って食べることから、”めはり寿し”と呼ばれるようになりました。

とあります。もともとは子供の頭ほどもある大きさの麦飯のおにぎりを包んでいたそうですが、現在は白米を使用。また駅弁用のめはりずしは、列車内でも食べやすく小ぶりな俵型で、日持ちのために酢飯としそとごまを混ぜ合わせた具になっています。ごはんをくるんだパリパリした高菜の葉の塩漬けと、あっさりしたしそ味の酢飯がおいしく、5個入ったすべて同じ味のめはりずしも、飽きずにペロリと食べてしまったほどです。

めはりずしを初めて商品として販売したのは、新宮にある1962年創業の「総本家めはりや」さん。こちらでは、めはり天むすなどのオリジナル商品も併せて販売しています。駅弁やめはりやさんだけでなく、熊野地方では、熊野本宮の参道はもちろん、日本最古の温泉としても知られる湯の峰温泉などあちこちで、めはりずしが名物として売られていました。

また、平安時代中期から信仰を集めていたという山深く神秘的な熊野三山で、熊野詣でのために熊野古道を歩く際のお腹がすいたときの携行品としても、めはりずしが重宝します。

また、柿の葉ずしで有名な奈良県の吉野地方でもめはりずしが食べられているそうで、奈良や京都など関西のコンビニでは、めはりずしのおにぎりが普通に売られているのもおもしろいところ。

ところで、塩漬けの葉にごはんを包んだ料理というと、海外では、アルメニアが起源といわれ、トルコや中東などでポピュラーな、ぶどうの葉にごはんを包んだ「トルマ」(トルコでは「ドルマデス」)を思い出してしまいます。

トルコのドルマデス

トルコのドルマデス

あちらは小ぶりな基本的に前菜料理ですし、めはりずしとの直接の関連はなさそうなのですが、まったく文化の違う場所で同じような料理が自然発生的に生まれた、というのは興味深い限りです。

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