夏の暑さにちょうどいい、土地になじんだ郷土食
「冷や汁」は、もともと昔から宮崎平野で食べられていた夏の朝食の定番。火ぼかし魚(アジを火であぶり乾かしたもの)の身をすり鉢ですってすりごまと合わせたものに豆腐、みそを加えてさらにすり、冷まし湯でのばしていったものに、きゅうりの薄切りやねぎ、みょうが、青じそなどを混ぜ合わせ、食べる直前に汁を熱い麦飯にかけます。
「神々の国・高千穂」のモニュメントが目印の宮崎駅を下り立ち、いかにも南国風なシュロの街路樹を歩いて本場の「冷や汁」味を求めて食べに訪れたのは、宮崎県庁近くにある、定評ある郷土懐石料理の店「杉の子」さん。店主さんは、家庭料理だった冷や汁を観光客のおもてなし料理として提供してその名を広めた功労者のお一人です。
冷たいみそ汁をごはんにかけた「ねこめし」(笑)のようで、初めて食べ方を伝授された時はびっくりしました。しかし食材が精進料理のようでいかにも健康的ですし、さっぱりしていてどんどん食欲が進みます。あとで調べたら、冷や汁はまさにお坊さんが全国に広めたものだったそうで、そういえば愛媛の宇和島にも「さつま」というよく似た冷たい汁かけごはんがありましたっけ。
宮崎を訪れた日が秋にもかかわらず季節はずれの気温の高さだったのですが、うだるように暑い夏の宮崎で食べるのにちょうどよさげな、まさに土地になじんだ郷土食でした。
麦飯に汁をかける前はこんな感じ。なお宮崎市では、「宮崎ナンバーワン・ソウルフード宣言」と書かれた、冷や汁だけのために27ページにわたる詳細なガイドブックを配布しているほどで、その熱意には頭が下がります。