バチカンの料理
バチカン市国(ヴァチカン市国) State of the City of Vatican | ヨーロッパ →この国の料理のレシピ・リンク集|世界料理マップについて
食事のタブーがほどんとない、カトリックの総本山
イタリアのローマ市内にある、世界最小の国家バチカン市国。ローマ教皇(現在は2013年に選ばれたアルゼンチン出身のフランチェスコ1世)が暮らすカトリック教の総本山であり、皇居の約3分の1の土地に住む1000人弱の”国民”のほとんどは、枢機卿や司祭、修道女などの聖職者です。バチカンは国土こそ極小なものの、イタリアをはじめ、南米やヨーロッパにおよそ10億人という潜在的な国民=カトリック信者を擁し、歴史的にも政治的にも大きな影響力を持つ国家といえます。
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バチカン |
さて、ではバチカンに暮らす枢機卿や司祭、修道女の方々はどんな食事を召し上がっているのでしょう。
世界には、食事について戒律を持つ宗教が少なくありません。たとえば、豚肉を食べず、決まった月に断食(ラマダン)を行うイスラム教や、お祈りをささげたコッシャーの食事しか食べないユダヤ教、また、牛肉を食べないヒンドゥー教などなど。
カトリック教にもかつては食物の戒律がありました。ところが1962年から65年にかけて行われた第2回バチカン公会議で、カトリック教はその姿勢を大きく転換させ、現在では食事に関するタブーがほとんどなくなりました(さすが、美食の国イタリアに根づいた宗教だけのことはある!)。
つまり、世界の各地に住む神父様や修道女の方々は、その土地の料理とお酒を飲食し、バチカンなら、さしずめイタリア料理やワインを食していると考えられます。バチカン美術館の地下には、旅行者がバチカン国内で食事できる数少ない食堂があり、焼きたてのピッツァが食べられます。ローマ教皇庁の御用達の焼き窯は、ローマにあるバンコッティ社製のものです。
もちろん、キリストの血肉といわれるパンとワインは、今も昔もカトリックの聖体拝領=ミサに欠かせない食物。ミサにはたねなしパンを使用し、ワインはミサ用ワインを用います。1888年のバチカン博覧会で金賞を受賞した"ヴィノ・デ・ミサ"(Vino de Misa)というワインは、歴代のローマ教皇が使用してきたもので、「ローマ法王庁の紋章である三王冠と天国の鍵を、ラベルに使用することを許された唯一のワイン」。グルナッシュとカリニャン品種のぶどうを使った甘い味わいで、現在60ヶ国の教会や修道院で用いられており、もちろんカトリック教徒でなくても購入可能です。
ただ、ミサには普通の市販のワインを使うこともあります。トスカーナ州キャンティ地方のロピアーノ修道院で作られている完全有機栽培のワイン"キャンティ・ロピアーノ"なども、バチカン御用達のワイン。ちなみに、ベネディクト16世の好みはドイツ・ワインだそうです。
ところで、カトリックの数少ない食事の決まりごととして、年間2回だけ断食があります。それは、灰の水曜日(マルディグラ=英語でFat Tuesday~肥沃な火曜日の翌日。マルディグラの日は謝肉祭~カーニバルで、大いに肉食する) と、イースター前の金曜日(キリストが亡くなった日)。そのほか、クリスマスには肉の代わりに川魚の鯉を食べるチェコやポーランドなど、昔の戒律が土地の風習として残っている地域もあります。
■参考文献
国マニア 吉田一郎著(交通新聞社)
e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。
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