2011年07月21日

ピンクカミラ|イスラエル料理|目黒

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家庭的なイスラエル料理店

【目黒】2011年4月にオープンした、イタリアのジェノヴァ生まれでテルアビブ育ちの陽気なイスラエル人シェフ、マルセロ・ラブさんと、日本人の奥様による家庭的なイスラエル料理レストラン。店名「ピンクカミラ」は"ピンクのらくだ"という意味だそうです。

おりしも、イスラエル/ パレスチナを舞台に市民の日常を描いた小川和也監督のコメディー映画「ピンク・スバル」(イスラエル大使館とパレスチナ常駐総代理部後援)が全国で上映中。日本とイスラエル/ パレスチナの架け橋のような映画とともに、あちらの方はピンク色がお好きなのかなあ、などと思い巡らしながら(笑)、この映画のロケに同行したディレクターさんと同席して、イスラエルの料理や食習慣等のお話をうかがってきました。

上写真は、イスラエルを代表する食べ物のひとつでもあるファラフェル780円。ひよこ豆やそら豆をつぶして丸めて揚げたコロッケのような料理で、ピタパン・サンドイッチの具としてもポピュラーです。

ファラフェルは、一説によると、古代エジプトのファラオの子孫で、原始キリスト教の流れを汲むコプト教徒たちの間で原型が誕生してイスラエルに渡り、土着のイエメン系ユダヤ人たちによって改良されたものだといわれています。現在では、エジプトではターメイヤ(ta'amiya)と呼ばれてそら豆を使うのに対し、イスラエルではひよこ豆を使うという大きな違いがあります(イスラエルでは、かつてそら豆中毒を出したことから、ひよこ豆しか使わなくなったという説もあり)。

いずれにしてもファラフェルは、古代から現代まで基本的な味付けに変化がなく、キリスト教徒、イスラム教徒、そしてユダヤ教徒と、宗教を問わず中東の地で人々に長く愛されてきた食べ物であることに変わりはありません。

さて、こちらのお店のファラフェルは、テニスボールを少し小さくしてつぶしたほどあるボリュームもさることながら、豆や野菜の味が残る絶妙なさじ加減の香辛料(実際に自分で作ってみると、この調味がなかなか難しい)と、中身のしっとりとした揚げたての具が何ともいえません。

これをイスラエルから取り寄せたタヒニ(白ゴマソース)をかけて食べるのですが、エジプトのターメイヤや、レバノン、シリアなど周辺国のファラフェルに比べて、スパイスがさらにマイルドです。

ヘルシーなことから、メニューに加えるお店が増えたり、専門店ができたりと、最近、日本でもじわりと人気のファラフェル。多くの日本人にとっても食べやすいのではと思います。ちなみに、ファラフェルは手軽な食べ物だけれど、ひよこ豆を水でもどすところから油で揚げ終えるまで、ちゃんと作ろうとすると実は調理にとても時間がかかるのです。

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上から時計回りにホムス(ヒヨコ豆のペースト)、ババガヌシュ(なすのペースト)、マドゥブファ(スパイシーなトマトディップ)の前菜セット1280円と、香ばしく、しっとりとした自家製のザータル・パン280円。後者は、赤シソのようなスマックと、いりごま、タイムなどをミックスした中東独特のスパイスであるザータル(ザタ)をまぶし、オリーブオイルをたっぷりかけたパン。イスラエルの食事のスタートは、これで決まり!

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キプロスのハルーミチーズを焼いてトッピングしたサラダも、イスラエルではポピュラーだそう。たっぷりとして、シャキシャキした野菜に、”新鮮な食材と健康への気遣いを信条とする”という、イスラエル料理らしさを感じる。右写真は、トルコなどでも見かけるシガーリン(小麦粉の皮にひき肉などの具を包んで揚げた料理)780円。名前のごとく細身のシガー(葉巻)のよう。

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マルセロさんのルーツのひとつである、モロッコをはじめとする北アフリカの郷土料理の羊ソーセージメルゲース。もちろん自家製。ラムを使っていて臭みがなく、ほどよくスパイシーでジューシー。肉の歯ごたえも絶妙。肉料理の専門家の手ならではの美味なる一品。

右写真はイスラエル・コーヒー(実質はトルココーヒーのようで、どろっとした挽いたコーヒー豆が下に沈んでいる)。

飲み物はほかに、カウンタートップいっぱいに並べられたワインも充実。ぶどうは、オリーブやいちじく、なつめやし、小麦などとともに古代イスラエルから継承される7つの薬味のひとつだ。日本の他のイスラエル料理店などでもよく見かけるゴラン高原産のヤルデン(Yalden)はもちろん、これまで日本にあまり紹介されてこなかったイスラエルのビンテージワインや、ブティックワイナリーのワインも今後そろえていきたいとのこと。

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マルセロさんオリジナルの自家製ハルバ・アイスクリーム680円。中東でポピュラーなごまのお菓子ハルバがアイスクリームになるなんて...と、ちょっと感激。ちなみにかかっているソースはなつめやしで、トッピングはピスタチオナッツと、こちらも中東らしい。ほかにも、氷で作ったグラスで飲むリキュールなど、マルセロさんのおちゃめなアイデアがメニューの端々に見受けられて、思わず顔がほころんでしまった。というわけで、おそらく現状では、メニュー数、クォリティでは東京一(ひいては日本一、かな)のイスラエル料理レストランというのが、個人的な感想。

そして、ユダヤのお菓子の代表格といえば、チーズケーキ(右写真)!ポーランドあたりのユダヤ人移民がニューヨークにもたらして広まり、今ではニューヨーク経由で日本でもおなじみの存在になった。もちろんこちらも自家製。クッキー生地を下にしき、甘さ控えめで、白チーズがふわふわとやわらかいおいしい一品だった。

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地中海の男らしい?明るくチャーミングなマルセロさんと、かわいらしい奥様。まだ若いお二人が、家庭的な雰囲気を醸し出すお店だ。場所は、目黒・権之助坂を目黒川にぶつかるあたりまで下りていったビルの2階。今後は日替わりメニューや品数も増やしていきたいとのこと。

なお、他の日本のイスラエル料理店と同様、使用している食材は厳格なコッシャー(Kosher。コシェル、カシュルート等とも。ユダヤ教でいう清浄な食材)だけではないとのこと。ユダヤ教徒とひとことでいっても、黒いフロックコートや髭などの容姿まで決められている超正統派から、コッシャー以外も食べ、一度もシナゴーグ(礼拝堂)に行ったことのないような戒律のゆるい人々まで幅広いのだ。


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近代イスラエルは、旧約聖書のソロモン王の時代からいにしえの歳月を経て1948年に建国されたユダヤ移民の国。そのため、ファラフェルやフムスのような中東に古来から伝わる料理に加えて、建国後に世界約80カ国から来た移民がもたらした食べ物がイスラエル料理として定着しているのですが、マルセロさんも、モロッコ系とポーランド系のご両親をお持ちとのことで、数あるメニューの中でも北アフリカやヨーロッパ由来の料理がちらほら目立ちます。

さらに、もともと肉料理の専門シェフとのことで、イスラエル料理以外に、牛肉のステーキや、エゾ鹿肉のカルパッチョなどの肉料理を提供。20日かけて毎日コントロールしながら熟成に気を配ったという肉料理の数々も、他店にない魅力があります。

食材はできる限りイスラエルから輸入するシェフのこだわりで、その分、価格が高めなメニューもありますが、ボリュームがあるので、それだけの価値を伴っていそうです。

お皿たっぷりに盛られたお料理が並ぶ食卓。伝統のおもてなし心と、「乳と蜜の流れる地」こと豊穣なイスラエルの大地らしさを、そのまま実感することができました。

→参照:
イスラエル料理について
東京のイスラエル料理レストラン・リスト

ファラフェルについて
ファラフェルのレシピ(英語)
非日常の国イスラエルの日常生活 (イスラエル料理レシピ
コッシャーについて1
コッシャーについて2

イスラエル大使館
日本ユダヤ教団(ジューイッシュ・コミュニティ・オブ・ジャパン)公式サイト
エル・アル航空



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ピンクカミラ
東京都目黒区下目黒1-5-16 目黒サンライズマンション本田ビル2F
Tel. 03-6417-9888
http://www.pinkcamila.com/

■営業時間 Open: 火-金18:00-23:00(LO)、土日祝18:00-22:00(LO)
■定休日 Close: 月


profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki


e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作: 「しらべよう!世界の料理」全7巻 (ポプラ社 2017)


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