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2011年05月25日

ザゴリエ|ブルガリア料理|大田区・雑色

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ワインと共にお手ごろ本格派料理を

【大田区・雑色】京浜急行・雑色駅東口からすぐ、アーケード商店街の路地に2011年1月オープンした、ブルガリア人シェフによるブルガリア料理レストラン。手ごろな価格の本格派料理と、多種そろったブルガリア・ワインが楽しめるお店です。

お店は、各国に造詣の深いソムリエのTさんから情報をうかがっていました。とにかくブルガリア・ワインが充実していると...。首都圏には他に、東京駅八重洲口に「ソフィア」という本格派ブルガリア料理店がありますが、雑色という意外なロケーションに惹かれ、ブルガリア・ワインと料理の饗宴にワクワクしながらこちらのお店を訪ねました。

まずメニューに目をやると、リストに並んだワインがすべてブルガリア産。うーん、スタッフの母国への愛着を感じます。そして、ホームメイドの水切りヨーグルト(スネジャンカ)などの各種前菜に、フェタチーズたっぷりの新鮮野菜サラダ、自家製ソーセージ(カルナチェ。上写真)にケバブ、カヴァルマのような手の込んだ煮込みのオーブン料理...と、食事メニューにも並々ならぬ意欲が。しかも、ワインを含めて値段がお手ごろです。

と、ここまで期待していざ食事を始めると...。お料理の味がまた、どれもスパイス控えめ、かつ上品ですばらしい。前評判は裏切られませんでした。たとえば、ブルガリアといえばヨーグルトですが、これだけ水分を飛ばした固いヨーグルトを作ったり、またフェタチーズ(ブルガリアから輸入したものだそう)を惜しげもなく使ったりすれば、けっこうなコストや手間がかかるはずなのですが...。

雑色の奇跡(笑)とでもいいたいほどの大盤振る舞い。雑色までは都心からだとやや遠く、行きにくいのが難点ではあるけれど、もしこれが都心のレストランだったら、値段が高くなったり料理の量が少なかったりで、たぶんこうはいかないと思うと、許せるかな(そうそう、それに徒歩圏内には、最近、コスタリカ料理のメニューをレギュラーで置くようになった「二葉」があり、ダブルで訪れることも可能ですし(笑)。

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まずは前菜盛り合わせ1200円(左写真)。上から時計回りに、リュテニッツァ(トマト、パプリカ、ニンジンのペースト、くるみ)、フェタチーズ、ロゾヴィ・サルミキチ(ひき肉と米のぶどう葉包み)、パプリカのマリネ、キョーポル(ナスのペースト)、スネジャンカとクルミ)。中東やトルコの"メゼ"によく似ているのだが、食材や調理法がちょっと違う。サラミを盛り合わせたメゼという名のメニューが別にあった。

右写真はブルガリアの代表的なサラダである、ショプスカサラダ850円。フェタチーズたっぷりで、ヘルシーかつとてもおいしい。トルコのチョバンサラダ(羊飼いのサラダ)などと似ているのだが、チーズがよりマイルドで、ヨーロッパ風だ。

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ブルガリアのおふくろの味ともいえる、いかにも家庭料理っぽいカヴァルマ(煮込んだ肉と野菜にたまごを落とし、オーブン焼きした料理)1400円と、見た目も美しいミシュ・マシュ(トマト、パプリカ、たまねぎ、白チーズ入りスクランブルエッグ)900円。これらいずれかと、ブルガリアのパン・ピットカだけで十分な食事になりそうだ。

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トルコやバルカン半島諸国でもよく見かけるハンバーグのキュフテ(左写真)。付け合わせは、カルナチェと共通で、ピリ辛のパプリカソースと、ポテト、豆。フライパン焼きよりも、焦げ目の付いた網焼きの方がいかにもおいしそう。

右写真はブルガリア伝統品種の地ぶどう・マブルッド種を使った赤ワイン。輸出用には珍しく、ラベルがブルガリア語で書かれている。ブルガリアにもメルローやカベルネソーヴィニヨンといった世界的にポピュラーなぶどう品種を使ったワインが多いのだが、地ぶどう品種のワインの方が、現地の料理にはしっくり合う。濃いルビー色で、渋みがありもったりとした、いかにも昔ながらの造りのワインだ。グラスで600円。

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デザートの、まるでチーズのように密度のある自家製ヨーグルトのクルミ&はちみつがけと、バクラヴァ。バクラヴァはトルコや中東でポピュラーな甘いパイ風のお菓子だが、これらの地域では小さな四角形なのに対して、ブルガリア版バクラヴァは大きな三角カット。どこかオーストリアのアップルシュトゥトゥーデルを彷彿とさせる。中東というよりも中央ヨーロッパ風な感じだ。どろっとしたトルココーヒーを一緒に。


料理の味付けは、塩気を控えめにしたりと、多少日本人向けにしているそうですが、食材そのものの味を楽しめるところがしっくりきました。各国料理をふだん食べ慣れていない方でも、普通においしく感じられるはずです。

ただそれでも、この日も在日ブルガリア人の方々が集っておられたくらいですから、本質を変えていない本場の味であることは確かでしょう。

また、料理には、ハンガリーのグヤーシュのように、赤や黄色のパプリカがよく使われているのが印象的でした。パプリカは焼いて下処理しているそうで、口の中に後味が残るようなクセが消え、柔かくてとてもおいしかったです。

ブルガリアの料理は、(かつてオスマントルコ支配下にあった)歴史的な背景から、ヨーグルトをはじめトルコの料理の影響を受けているのがよくわかるのですが、キリスト教(ブルガリア正教)信者が多い国なので、たとえばイスラムの国トルコではご法度の豚肉が使われたりと、食材がいっそうバラエティ。そして、(キリストの血である)ワイン醸造への思い入れはトルコ以上で、ワインと一緒に料理に楽しむことをぜひおすすめしたいです。

あ、下戸の方向けには、香りがよくてきれいなピンク色の、飲むバラジュースがありましたよ。もちろん、こちらもブルガリア産です。

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シェフは、バラの谷で有名なブルガリア中央部のご出身で、店名もその地名から名付けられたとか。一緒にスタッフをされている日本人男性もブルガリア滞在歴の長い方とのことで、二人の会話がブルガリア語であるほか、店内にブルガリアの地図やブルガリアのお酒ラキアのボトルなどが飾られるなど、本国にいるような雰囲気を盛り上げてくれます。

路地奥という場所柄と、ダークブラウンの木目のシックでこじんまりとしたフロア。お忍びで行きたいような、隠れ家気分をそそられました。駅からはブルガリアの国旗を目印にどうぞ!

※参照→東京のブルガリア料理レストラン・リスト
 →ブルガリア料理について

※他、ブルガリアに関するサイト紹介
ブルガリア大好き!
 (ブルガリア好きのコミュニティ・サイト)
パザール・ドット・ジェイピー
 (ブルガリアの家庭料理レシピ、旅行、生活を紹介)
Find Bulgarian Food (英語)
 (ブルガリア料理のレシピ、料理書などの情報が満載)
Information Bulgaria (英語)
 (ブルガリアの総合情報)




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ザゴリエ
東京都大田区仲六郷2-42-3 TFハウス1F
Tel. 050-3586-3105
http://zagorie.jp/

■営業時間:火-土11:30-14:00、18:00-23:00(LO22:30)、日12:00-14:00、18:00-21:30(LO21:00)
■定休日:月


profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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