e-food.jp » 青木ゆり子のブログ » ■食の話題いろいろ , ウズベキスタン料理 , シルクロードの料理 » サマルカンド 旧貴族家庭の料理|シルクロードの料理
2010年12月31日

サマルカンド 旧貴族家庭の料理|シルクロードの料理

uzbekfood_table.JPG

レストランとは違った料理

奈良(平城京)、開城(高麗)、西安(=長安。唐)と、これまでシルクロード各地の王朝の首都に受け継がれた宮廷料理を紹介してきましたが、ウズベキスタンではそういったお店を見つけることができませんでした。そこでせめてもと思い、20世紀初頭のロシア帝国占領以前の貴族の血を引くというサマルカンドの上流家庭を訪ね、食事を体験させていただきました。

ウズベキスタンの歴代王朝の中でもっとも栄えたのは、14世紀に興隆したティムール帝国。その建設者であるアミール・ティムールは、1991年にソビエトから独立した後のウズベキスタンの国民的英雄として、現在では街のどこかに銅像が見られるほどです(おそらく、撤去されたレーニン像の跡地に建立されたのでしょう)。

それ以前のウズベキスタンは、1918年にロシア帝国が中央アジアを征服して以来、1991年の独立までロシアから体制が変わった社会主義国・ソ連の中に取り込まれていました。つまりこの間、貴族階級は事実上いなかったはず。しかしながら、ロシア帝国のトルキスタン総督府であり、現在もいかにもソ連然とした人工的な趣きの首都タシケントに対して、青の都ともいわれるサマルカンドは、中央アジア最大のビビハニム・モスクをはじめ文化遺産が多く、帝国の古都らしい面影を残した街なのです。

以上、そんな歴史背景をふまえて、いただいたお料理の数々を紹介しましょう。

samalcandhome_nasu.jpg
samarkandhome_salad.jpg

前菜のナスのトッピングとサラダ。健康のことを考えた、たっぷりの野菜がうれしい。

uzbekhome_pizza.jpg
uzbekhome_fry.jpg

トマトソースベースの薄いピザと、揚げ餃子風のミンチ肉、そして揚げパン。どれも、トルコや、レバノンなど中東の料理にどこか通じるものが...。

uzbekfood_pilov.JPG
samalcandhome_people.jpg

メインのサマルカンド・プロフ。ご当地名産の黄色いにんじんがたっぷり。同じ料理でもレストランとはひと味違っていて、こちらも大変おいしかった。右写真はご家族の一員。残念ながら私はロシア語もウズベク語もNGなので、英語で対応していただき、ウズベキスタンの家庭料理についていろいろとうかがった。

samalkandhouse_inside.JPG
uzbekfood_inside2.JPG
samalcandhome_ceiling.jpg
samarkand_mosque.jpg

このご家庭の古式ゆかしい家屋が貴重なものだそうで、ドイツや日本の有名写真家が訪れ、写真集にも載ったことがあるそうだ。イスラーム風な曲線を加えた壁面、美しい天井の装飾が見事。ご家族の思い出とともに大切に、修繕を加えながら暮らしていらっしゃるとのこと。家からはサマルカンドのランドマークでもあるビビハニム・モスクも近い。


ウズベキスタン国内のレストランやカフェの料理はレパートリーがだいたい決まっており、何日かすると飽きてきてロシア料理に手が出たりするのですが(笑)、家庭料理はレストランとは違ったメニューも多くて、ちょっと驚きました。日本は外食が発展しているのでつい見逃してしまうのだけれど、家庭料理を体験しないとその国の真の食を知ることはできないのですね。

また、先に述べた歴史背景のように、ウズベキスタンはソ連時代に長きにわたって社会主義国だったので、実は王朝的な料理はほとんど期待していませんでした。しかしながら、今も旧貴族の各家庭でレシピが脈々と受け継がれているのを知ったことは、感慨深かったです。

***

次は、韓国・ソウルのウズベキスタン人街のリポートです。



profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

※この記事・写真等はe-food.jpが著作権を所有しています。無許可での転用・転載はご遠慮ください。商用利用の記事、写真等は販売しております。→「利用規約」



この記事のURL:

GO TOP