2010年11月14日

西安・唐の宮廷料理|シルクロードの料理

xian_gyoza2.jpg

楊貴妃の時代の料理が今に

西安に行ってきました。秦の始皇帝の時代以前から千年以上も王朝の首都であり続け、唐の頃にはシルクロードの発着点として繁栄した、かつての長安です。遣唐使時代の奈良(=平城京)からここまでたどり着くと、歴史の重みを感じずにいられません。というわけで、今回は西安の食についてリポートしてみます。

ちょうど本日(11/14)夜、BS朝日放送で藤原紀香さん出演による、世界三大美女として知られる唐代の皇妃を特集した「伝説の美女 楊貴妃 西安1300年紀行」が放映されるとのことで、楽しみにしています。おそらく平城京1300年祭と、ファンビンビンさん主演による2005年の「大唐芙蓉園(邦題「楊貴妃」)」、殷桃さん主演による2009年の「楊貴妃秘史」といった人気中国ドラマにちなんだ企画でしょう(番組では後者の映像がふんだんに使われていました)。

2005年に西安にオープンした、その名も大唐芙蓉園というテーマパークに隣接した高級レストラン「御宴宮」が供する、豪華な唐代の宮廷料理も紹介されるそうですよ。

後記:番組では、御宴宮の宮廷料理13品からナマコのキビあんかけ、胡桃と山芋の炒め、スズキの唐揚げ、そして珍味であるラクダの肉球のスープが紹介されていました。

xian_gyoza.jpg
xian_engyoza.jpg

西安市内には「御宴宮」のほかにも、唐代より受け継がれた宮廷料理を提供するレストランがあります。西安といえば餃子が思い浮かびますが、上写真は、国家主席クラスの要人も訪れる西安の有名餃子店「徳発長」の、さまざまな形をした美しい宮廷餃子の数々(左写真は模型。何と318種類あるそうです)。餃子宴というコース料理があったけれど、全種類を食べようとすると、1日では済みそうもないですね(笑)。

ちなみに、千葉県の柏には、「吉鳳園」という本場らしい西安の宮廷餃子を提供してるお店があるとのことで、うかがってみたいところです。

***

さて、楊貴妃のお好みだったという料理をコースで提供しているレストランとして、今回は食通の地元ガイドさんの案内で、高級ホテル・西安君楽城堡酒店内にある「楽宮」を訪ねてみました。以下がその宮廷料理の数々です。

xian_enzensai.jpg
xian_ensoup.jpg

左写真は、前菜の宮廷御用拼盤(本当は舟辺に皿)。松の実をまぶした海老を揚げたものに、中国サラミ、きゅうりなどを飾っている。右写真は鶏茸栗米羹という、黄金色をした鶏肉と茸のスープ。現代風にアレンジしているのだろうが、宮廷料理らしい優雅な感じ。

xian_engyuniku.jpg
xian_endaidai.jpg

左写真は、黒椒煎牛柳粒(牛肉の黒胡椒炒め)。スパイス(胡椒はインド原産)はシルクロードの発着地・長安に欠かせないもの、ということか。右写真は、杏花橘香鶏という、だいだい風味の揚げたチキン。

xian_suzuki.jpg
xian_enkinoko.jpg

左写真は、鮮竹蒸?魚(スズキの蒸し物)。右写真は、鮑汁山珍茹(茸とチンゲン菜の鮑ソース炒め)。肉厚の鮑も入っている。内陸の西安(長安)になぜスズキやアワビ?と思ったら、当時、黄河を伝って届けられたのだとか。、長安と同様に海のない平城京でも、遠方諸国より魚介が献上され、宮廷で食されていたそうだから、まあ不思議ではないか。各地からあらゆるモノが集まる、栄華を極めた都であったことが想像できる。

xian_choanmen.jpg
xian_enannin.jpg

左写真は、長安臊子面。待ってました、麺料理!(ほかにこの宴では宮廷風の蒸し餃子も出た)。もちろん手延べ麺で、ほどよいコシのあるきしめんといった感じ。小さく角切りした肉や野菜の具と、ねぎがトッピングされていた。スープはコクのある肉・野菜汁だろうか。

右写真は、日本でもおなじみの杏仁豆腐。楊貴妃の好物だったそうだ。

xian__enfuruit.jpg
xian_sake.jpg

左写真は、締めの季節のフルーツ。楊貴妃お好みの果物といえば茘枝(ライチ)を思い浮かべるが、この時期はシーズンではないそうで、出なかったのが残念(ちなみにライチの季節は夏ごろ)。日本でもおなじみの冷凍ライチが出なかっただけ良心的と思うべきか(苦笑)。ほかに、なぜかプチトマトがデザートとして登場。トマトは、とうがらしとともに西安の料理には欠かせない食材である。

右写真は、黄色稠酒という、楊貴妃も愛飲したといわれる甘酒。もち米のお酒に桂花(キンモクセイの花)で香りづけしてある。西安の名物土産でもあり、空港などでも販売されていた。


全体的にあっさり、上品な味。漢方のお膝元・中国の料理らしく、何気に食材の組合せなどから栄養のバランスが考えられているようでした。料理自体は、伝統を受け継ぎながら現代風にアレンジされた感じ。また、西安にはとうがらしを多用した比較的濃い味の料理が多いのですが、宮廷料理は別格です。実際の唐の宮廷では、一度の食事に100品の料理が出されたこともあるというから驚きですね。

ほかに、この楊貴妃宴よりも豪華な「始皇帝宴」というコースもあるそうです。こちらは一体、どんな内容なのでしょうか。

ところで、餃子宴や楊貴妃宴を含めて、中国料理は、西洋料理とは違い、本来は食卓を囲むある程度の人数が集まらないと、料理の種類が限られたりお皿が小盛りになったりで、どうも豪勢な気分が味わえないものです。今回は麺料理の探索という別の目的もあったものの少人数だったので、宴に関しては、可能だったら日本からツアーを組んだり、現地ツアーに参加したりするべきでした。

西安は見どころ満載の魅力的な街で、ぜひ再訪したいと思っています。行き時は、世界遺産である「始皇帝 兵馬俑」(これぞ世界遺産!と呼ぶにふさわしい、震えがくるほどすばらしい遺跡でした)の発掘・新展示がほぼ完了するという2年後あたりでしょうか。そして今度は宴のために、ぜひとも大勢で!(笑)。

***

次は、西安のエキゾチックな庶民の伝統食をリポートします。



profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki


e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作: 「しらべよう!世界の料理」全7巻 (ポプラ社 2017)


※この記事・写真等はe-food.jpが著作権を所有しています。無許可での転用・転載は絶対しないでください。記事の原稿、写真は販売しております。→詳細「利用規約」

このエントリーをはてなブックマークに追加


コメント

トラックバックURL:

この記事のURL:


カスタム検索

世界料理ブログ(新)

RSS フェイスブック ツイッター
e-food.jpについて
お問合せ
コミュニティのご案内