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2009年02月27日

カラバッシュ「モザンビーク・ウィーク」

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元ポルトガル領の国の料理

【浜松町】2月21日から27日までアフリカ料理レストラン「カラバッシュ」で開催された、「モザンビーク・ウィーク」の関連イベント”モザンビーク・キッチンショー”にうかがってきました。

先週のエリトリアに次ぐ、旅行会社「道祖神」さんによる創業30周年記念イベントの一環。日本であまりなじみのないアフリカの国が続々と登場して、私などワクワクしてしまうのですが(笑)、今回のハイライトは、もとポルトガル領のアフリカ南東部の国・モザンビーク。在日モザンビーク人のベネットさんの指導のもと、モザンビークの主食のひとつシマの作り方を実演しながら、参加者に調理体験してもらうという趣向でした。

シマは、とうもろこしの粉をわかしたお湯に加えながら作る、おもち状のモザンビークの主食のひとつ。モザンビークの周辺の国々でも食べられています。シマはシチューと一緒に食べられるそうですが、今回は、お好みで辛いピリピリソースをかけていただく、ココナツミルク&トマトのエビのシチュー(Camarao a Laurentina)が添えられました。インドのカレーほど辛くなく、うまみが利いていて、シーフード好きの日本人にはとてもおいしく、親しみを感じる一品でした(上写真)。

そういえば、モザンビーク沿岸部では質のいいエビがたくさん採れ、同じくエビ好きな国民性の日本に車エビやロブスターがたくさん輸出されているのだとか。意外なところで身近な存在だったのですね?。

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サッカー選手のイラストが描かれたモザンビーク産の、白っぽいとうもろこしの粉。現地では1kg百円程度で売られているとか。そういえばベネットさんもサッカー選手だったそうで、きっと本国では人気スポーツなのだろう。

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珍しいモザンビークのビールと、食後には、ルイボスティーとモザンビーク製のココナッツ風味のビスケットを。素朴でありながらヨーロッパ風で、いったいどんな国なのだろう…と想像がふくらむ。


モザンビークは、インド洋に面した沿岸部で紀元前よりアラブと交易があり、また、歴史の教科書でおなじみのインド航路の発見者ヴァスコ・ダ・ガマが、喜望峰のあとに到達してインドへの中継地とした16世紀初頭から、独立を果たした1975年までおよそ500年間もポルトガルの植民地だった国。そのため、アラブの影響に加えて、同じくポルトガル領だったアンゴラなどと一緒で、公用語はポルトガル語、またフェルナンドさん、アントニオさんといったラテン系の名前の方が多いなど、ポルトガルの影響が今も色濃く残っています。

もちろん、お料理にも大航海時代のポルトガルの面影が感じられ、興味深かったです。

先のシチューもまるで、南インド(ポルトガル領だったカリカットやゴア)のココナツミルク入りシーフードカレーと、同じくポルトガル領だったブラジルの、北東部バイーア地方のココナツミルク入りの魚介シチュー、ムケッカの中間のようです。

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右はモザンビークがまだ植民地だった1969年に、ガマの生誕500年を記念して発行された切手。これで料理の伝わったルートもしっかりわかっていただけるはずです。つまり、インド→モザンビーク→ブラジル→ポルトガルという経路(アフリカからブラジルへは多くの原住民が奴隷として連行されました)。ちなみに、シマの材料でもある南米原産のとうもろこしや、トマト、カレーに欠かせないとうがらしは、おそらく逆ルートでアフリカ、インドに伝わったのでしょう。

また食べ物以外で、サンバなど現在、世界に知られているブラジル音楽のルーツも、きっとモザンビークやアンゴラ(主要な部族はバンツー系)なのだと思います。

などと、紀元前および大航海時代以来の悠久の歴史をひも解くと、モザンビークという国へのイメージがぐっとふくらみ、いっそう思いがはせますね。

ちなみにモザンビークは1995年からはなぜか英連邦に属していて、ポルトガル、アラブ、アフリカのネイティブであるバンツー、そしてイギリス...と、現地ではさらにクロスカルチャーな魅力が味わえそうです。

参照
モザンビーク料理について


カラバッシュ
港区浜松町2-10-1 浜松町ビルB1
Tel. 03-3433-0884
http://www.calabash.co.jp/

■営業時間 Open: 月?金11:30-14:00、18:00-23:00(L.O.22:00)、土18:00-23:00(L.O.22:00)
■定休日 Close: 日祝



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profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。

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