2009年01月20日

南極越冬隊は何を食べているのか

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ペンギンではないそうです(笑)

今年の1月14日は、南極観測隊に同行しながら取り残された樺太犬タロとジロが1年後に生還してちょうど50年目だったそうですが、先日のBusiness Media 誠に、「南極越冬隊は何を食べているのか」という、南極がらみの興味深い記事を見つけました。以下、本文からの抜粋です。


2008年12月25日、第50次日本南極地域観測隊が出発した。1年3カ月間という滞在期間中、南極越冬隊の胃袋を支えるのが、調理担当の篠原洋一さんだ。ここでは2回にわたり、彼らがどんな活動をし、どんなものを食べているのかを篠原さんに聞いていく。……ひょっとして、ペンギンを食べたりするのだろうか?

「南極観測隊」とか「南極越冬隊」という言葉は、昔からよく耳にする。毎年、日本を初め世界各国が、そうした部隊を南極に送り出していることも皆、知識として知っている。しかし彼らが、南極で日々どのように活動し、そしてそれがどのような成果を挙げているのか、実際には何も知らない人がほとんどだろう。

南極観測隊は南極で何をしているのか? そんな我々の素朴な疑問に答えてくださったのが、篠原洋一さん(46歳)だ。篠原さんは、以前南極越冬隊の調理担当として実際に1年3カ月に及ぶ南極生活を経験し(第33次隊)、今回再び第50次隊の調理担当として南極へ出発した人物である。
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「もしかして、ペンギンを食べたりするのですか?」と聞いたところ、「それ、いろんな取材で必ず聞かれるんですよね」と笑われてしまった。「ペンギンはもちろん、現地の動植物には、決して手をつけません。食材は基本的に、東京・築地など日本で大方を仕入れ、船積みし、途中寄港するオーストラリアのフリーマントルで積み足して南極に向かいます」。

持ってゆく量は、やはり滞在期間の1年3か月分?「いえいえ……滞在期間分に加えて、予備食を300日分、持ってゆきます。なぜなら、自然条件の過酷な南極ですから、南極観測船の『しらせ』が翌年来られないという万一の場合も想定しないといけませんし、基地施設の火事などの不測の事態にも備えておく必要がありますから」。
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「あと特筆すべきこととしては、隊員たちの様々なニーズに対応しつつ、食べるよろこびをできるだけ大きくするためにテーマメニュー制を導入していました。『イタリアン・ナイト』『アラビアン・ナイト』『スパニッシュ・ナイト』『北海道ナイト』『沖縄ナイト』『伊達政宗ナイト』といったように、各国料理あるいは、各郷土料理を出すようにしているんです。さらに、そうした料理の数々に関して、ちょっとしたウンチクを加えながら出してあげると、とても喜んでもらえるんですよ。きっと、こちらの熱意や創意工夫が伝わるのでしょうね。でも、あくまでも予算の範囲内ですることですから、豪華な食材を使った翌日は『お茶漬けビュッフェ』にするなどして、バランスを取ってゆくことが大切なんです」。

「南極越冬隊は何を食べているのか――南極越冬隊調理担当・篠原洋一さん」(Business Media 誠)より


やはり、ペンギンやアザラシを食べているわけではないようで...(笑)。各国料理や郷土料理ナイトがあるなんて、何だか楽しそうですね!

有史以前からの極寒地であるため、先住民が存在しなかった南極大陸は、「南極条約」によりどの国の領土にも属さないと宣言されています。現在は、日本のほか、アメリカ、中国、ロシア、イタリア、インド、ブラジルなどおよそ30カ国の基地があり、全体で夏は4000人、冬は1000人(うち日本の基地は夏60人、冬40人)もの調査員が暮らすそう。それらの基地でも日夜、工夫を凝らしたお国料理が振舞われているのでしょうか。

ちなみに、南極で1年間生き延びたタロとジロは、ペンギンやその卵を捕食していたそうです(現在では、生態系を壊す懸念から、南極への動物の持込みは禁止されています)。

そういえば、同じく南極越冬隊の調理担当だった西村淳さんの著書「面白南極料理人」でも、日本から調達した大量の冷凍食材を使って、南極特有の環境(たとえば内陸部でマイナス80度近くに達する超低温や、1年中一定方向に吹く"カタバ風"、高地での沸点の低さ)と奮闘しながら、過酷な業務をこなす隊員たちのためにおいしい食事を作る創意工夫が描かれていましたっけ。

この「面白南極料理人」は映画化され、2009年8月に劇場公開が決定しているそうです。タロ・ジロの記念年であることや地球温暖化の警告の象徴とも重なり、今年は南極がちょっとした脚光を浴びる1年になるかもしれませんね。

→参照 南極の料理について(南極の地図付き)


profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki


e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、「世界の料理レシピ・ミュージアム・ライブラリー」館長。

2000年にサイト「世界の料理 総合情報サイトe-food.jp」を立ち上げ、以後、執筆、講師、レシピ開発、在日大使館や大使公邸でのシェフなどとして、食で日本と世界を相互につなぐ社会貢献をモットーに活動。
プロフィール詳細
著作: 「しらべよう!世界の料理」全7巻 (ポプラ社 2017)


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コメント

マルイさん、コメントをありがとうございます。

マイナス40度で、今日は温かい、という感じなのだそうです。でも地球の温暖化で海岸部分の気温が上がっていることも問題になっているようで心配ですね。

  • 2009年01月26日 22:47

ゆんさん、コメントをありがとうございます。

たしかに逃げ場がなさそうですよね。南極観測隊員は過酷な任務なのだと思います(最近は女性もいるようですが...)。

  • 2009年01月26日 22:44

南極ですか、
とても興味深いお話ですね。
しかし、寒そう・・・


>沸点が低い

これは標高の高いドームふじ基地の話でしょうね。昭和基地は海のそばなので、沸点は100℃のはずです。

越冬した先輩にお話しをうかがう機会があったのですが、越冬中は文字通り「逃げ場がない」ので、ストレス発散にもなる食事はとても大事だったとか。

  • ゆん
  • 2009年01月20日 20:16

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